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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

巨大テック企業が富を貯め込み貧富の差はどんどん拡大…「21世紀の富の偏在」をどう解決するか? 大前研一氏が「RTOCS」思考で導き出す新たな富の再分配システム

「現代のマルクスだったら」と仮定して解決策を考える(イラスト/井川泰年)

「現代のマルクスだったら」と仮定して解決策を考える(イラスト/井川泰年)

 現在、海外の巨大テック企業がどんどん富を貯め込み、世界中で貧富の差が拡大している。この「21世紀の富の偏在」をどう解決すればよいのか。

 経営コンサルタントの大前研一氏は、「RTOCS(アールトックス)」という思考法を提唱している。これは「Real Time Online Case Study=リアルタイム・オンライン・ケーススタディ」の略で、政治・経済・経営などの様々な課題について「もし私が○○だったら?」と仮定し、国・自治体のトップや経営者といった組織のリーダーとしての立場から現状を踏まえて将来像を予測し、今後の具体的な打ち手を考える手法だ。新刊『RTOCS 他人の立場に立つ発想術』が話題の大前氏が、「RTOCS」を用いて導き出した、新たな「富の再分配システム」を提言する。

 * * *
 前回記事では、保守化・右傾化は高市早苗政権が誕生した日本に限らず、欧米など世界的な傾向だと指摘した。

 先進国の保守政権や右派政党の主張は「移民・難民の排斥」「自国を再び偉大に」などで共通している。

 たとえば、アメリカのトランプ大統領は移民政策を厳格化する一方で、「MAGA(Make America Great Again=アメリカを再び偉大に)」と喧伝している。イギリスの右派ポピュリスト政党「リフォームUK」のファラージ党首も「不法移民の到着を阻止する」「イギリスを再び偉大にする」と主張している。そして、高市首相も「外国人対策で政府の司令塔機能を強化する」「日本をもう一度世界のてっぺんに」「Japan is back」などと言っている。

 だが、これらはすべてイカサマであり、ペテン(まやかし)に過ぎない。なぜなら、前号で述べたように、先進国では国力は人口に比例するが、ヨーロッパや日本では少子高齢化による人口減少が進んでいるので、外国人を排斥したら人手不足で社会が立ち行かなくなるからだ。つまり、積極的に外国人を受け入れて人口を維持しなければ、先進国が「再び偉大」になったり、「もう一度世界のてっぺん」になったりすることはないのである。

 また、IMF(国際通貨基金)が発表した2025年の世界GDPランキングによると、日本は前年の4位からインドに抜かれて5位に転落した。人口が10倍以上のインドに抜かれるのは仕方がないとしても、人口が3分の2でしかないドイツ(3位)に抜かれたことについては、危機感を持たねばならない。

 要するに、ドイツはトルコなどからの移民・難民を大々的に受け入れてきたことによってGDPを拡大しているわけで、日本が移民・難民に対する門戸を閉ざしていたら、「世界のてっぺん」はおろか、国力を維持することさえできないのだ。

 それ以前に、いま日本が凋落の一途を辿っている理由は何か? 工業化社会時代の「第2の波」の段階で止まっているからだ。世界は情報化社会の「第3の波」を通過し、AI(人工知能)&スマホ革命の「第4の波」に入っているが、日本企業は「第3の波」の前半でホワイトカラーの間接業務を効率化できず、未だに大量生産・大量消費の工業化社会の延長線上にある。

 だが、このままでは途上国と競合するレベルの製品やサービスしか出てこない。だから、日本の賃金は欧米のみならずアジアの主要国にも後塵を拝し、途上国並みにとどまっているのだ。

 日本が「もう一度世界のてっぺん」を目指すのであれば、アメリカのマグニフィセント・セブン(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)や中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に匹敵する巨大テック企業を生み出さなければならない。

 しかし、日本はユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)が8社しかなく、経団連は2027年までに100社に増やすことを目標としているが、その候補になりそうなスタートアップはほとんど見当たらないのが現状だ。

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