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キャリア
大学定員充足率から読む「難化する大学」「易化する大学」

津田塾大・情報科学科の“定員割れ”は何を意味するのか? 補助金に影響する「定員充足率」がその年の入試難易度を左右しかねない現実

受験生はたまったもんじゃない?

 一方で、定員割れ、すなわち収容定員充足率が一定基準を下回った場合も、補助金が減額されるリスクがある。

 現在、私大の6割ほどが定員割れをしている。2024年度からは「直近3年間の収容定員充足率が8割未満」の私立大学は修学支援新制度(年収910万円以下の家庭の子供へ支払われる支援金)の対象外となる。また、90%を割ると大学への補助金が減額されていく。2024年度の収容定員4000人未満の小規模私大の入学定員充足率の平均は88.86%と9割を切る状況だ。つまり補助金が減額される水準である。

 このように、定員割れをすると学費収入が入ってこない上に、補助金も受け取れなくなるため、経営はさらに苦しくなる。大学経営が難しいのはある日突然、「店じまい」をするわけにはいかないところだ。その時点で在籍する学生をきちんと卒業させなくてはならない。つまり、「店じまい」を宣言した後、4年間は運営を続ける必要がある。

 ある大学関係者は次のように語る。

「名門、京都ノートルダム清心女子大学が閉校を選んだのは、財政的に『今なら、すべての学生を卒業させられるから』という観点から判断したのではないか、とも言われています」

 その一方で、冒頭で紹介した津田塾大学のように「調整のためにあえて単年度は定員割れにする」と推測されるケースが多々あるのも事実だ。

 津田塾は「国際数理データサイエンス学部(仮称、2028年開始)」の設置計画を文部科学省に申請していた。新学部設置が認められるための条件として、定員充足率が基準値にあることがここでも求められる。4000人以上の大学で300人以上の学部の場合、定員充足率が1.05倍未満である必要があるのだ。そのため、津田塾は2025年度入試で情報学科の合格者をかなり絞り込んできたと推測されるというわけだ。

 これを読んで受験生ならびに保護者はこう思うのではないか。

「そういった事情で合格者を絞り込まれたら、受験生はたまったもんじゃない!」

 例年なら合格する学力があるのに、たまたま、定員充足率の調整で合格者絞り込みの年に当たって不合格になる可能性もある。合格者絞り込みをしそうな大学、そうでない大学を事前に知りたいところだ。

 関連記事では、どの大学が定員オーバー気味で2026年入試の合格者を絞り込む可能性があるのか、また、どの大学が合格者を増やす可能性があるのか、定員充足率の観点から大学別に解説している。

■関連記事を読む:《2025年は多くの大学で入学者超過》大学の定員充足率から見えてくる2026年入試「難化する大学」「易化する大学」の傾向 入学者が多かった慶應義塾、青山学院、獨協、成城などへの影響は

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。

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