東京は「高齢者が大規模に住む街」へと変貌する
東京が転入者超となった一因は外国人の転入者増によるもの 出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2024年)
背景には地方圏の若者が減り、東京圏へと向かう人が年々少なくなってきたことがある。これは、遠からず東京の人口が減少することを意味している。東京都の推計によれば、東京都の人口は2030年にピークを迎える。
人口の割に出生数が少ない東京都は、地方圏からの若者の転入が減れば高齢化率が上昇する。
高齢化率を押し上げる要因はもう1つある。定年退職後も故郷に戻らず東京に住み続ける人が多くなってきていることだ。出身地の人口が激減して「不便な場所」となり、故郷に戻りたくとも戻れないというケースが増えてきているのである。
総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2024年)によれば、東京都の日本人の転出者は、前年に比べて1万1213人減った。東京一極集中は転入者数が転出者数を上回ることで起きるが、2024年が転入者超となったのは日本人の転出者減と外国人の転入者増が要因だ。全国から続々と若者が東京に集まって一極集中が起きているわけではないのである。これから東京は高齢者が大規模に住む街へと変貌していく。
人口が減りながら高齢化率が上昇するということは、勤労世代が減少していくということでもある。すなわち「集積の経済」の終わりの始まりだ。東京の勤労世代は50代が中心で、すでに実態は「中年の街」と化している。
このまま東京の「街としての老い」が進んで行けば、消費のトレンドは変わる。それに伴って、産業構造も大きく変貌しよう。企業や店舗の淘汰も進むだろう。量的な拡大が望めなくなるのである。
そうした状況下で東京が国際競争力を維持するには、質的成長を実現する都市へと作り替えるしかない。人口減少社会に適した産業立地や投資、街づくりを推進するための戦略性が問われる。
