「高市財政がハイパーインフレを招く」ことはあり得るのか(時事通信フォト)
高市早苗首相が打ち出した約12兆円の赤字国債発行が盛り込まれた総額21.3兆円の大型経済対策に対し、大メディアでは「財政破綻を招く」「インフレを助長する」「株安、円安、国債安のトリプル安を招き、金融危機につながる」との指摘がなされている。そんななか11月25日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)でコメンテーターの玉川徹氏、朝日新聞の原真人・編集委員と、高市内閣で政府の経済財政諮問会議の民間議員に起用された永濱利廣氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)が高市財政について激論を戦わせた。改めて永濱氏に2万円給付を「痛み止め」と表現した意図、ハイパーインフレの怖れについて問うた。
上がりすぎている物価に対応するための「痛み止め」
──永濱氏は番組のなかで、今回の経済対策を「痛み止め」と表現。それに対して玉川氏が「経済対策と言って打ち続けた結果、麻薬中毒になっている」と指摘した。「痛み止め」とはどういう意味なのか。
以前の財政政策は、需要が足りない時に、政府が財政出動して需要を高め、雇用を増やすのがオーソドクスなケインズ型の財政政策でした。それに対して近年新しく出てきたのが、従来のケインズ型とは一線を画すMSSE(モダン・サプライサイド・エコノミクス)です。政府が経済安全保障やDX、環境対策だとか、子育て・教育・人材投資に財政を投入し、民間を誘導することで供給力を高めるということです。米国、EU、中国はすでにこれを進めています。高市首相がやろうとしているのはこのMSSE的な政策で、メディアは補正予算の1本目の柱の物価高対策を中心に取り上げていますが、重要なのは2本目の「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」のほうなのです。
しかし、強い経済の実現には時間がかかります。このため、短期的に来年の1年ぐらいは上がりすぎている物価を下げるために、電気・ガス負担軽減とか、ガソリンの暫定税率廃止といった対策を講じて、痛み止めを打つ。そして予算に高市色が出せる再来年ぐらいから経済成長に向けていくということでしょう。その意味では、「子供に対する2万円の給付」は個人的には必要性は高くなかったと思います。
