日銀の金融政策が地銀の経営環境にも大きく影響してくる(日銀・植田和男総裁。写真:時事通信フォト)
金利上昇が動き出したことによって、地方銀行は収益が上がる機会が到来している。また、地銀の再編が進めば、規模の経済が働き、業務の効率化によって経営状況を改善することにもつながる。そのような地銀の中で、いま投資家として注目すべき銀行はどこなのか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が分析し、その注目銘柄を解説する。
* * *
日本の10年国債金利が上昇を続け、2%に肉薄している。また、次回の日銀政策決定会合での利上げ観測も高まっている。
長らく続いた低金利環境が転換点を迎え、地方銀行の収益構造が大きく変わろうとしている。金利上昇は利ざや改善を通じて地銀の本業収益を押し上げる一方、地域の人口減少やデジタル投資負担により銀行間の競争力格差が鮮明になりつつある。
金利上昇で地銀に追い風
金利上昇局面では、預貸金利ざやが拡大する。預貸金利ざやとは、銀行が預金者から集めた預金に支払う金利と、そのお金を企業や個人に貸し出す際に受け取る金利(貸出金利回り)の差額のことで、銀行の主要な収益源であり、「貸出金利回り-預金金利回り」で計算される銀行の収益性を示す指標だ。金利上昇局面においては貸出金利回りが上がることで、この利ざやが大きくなり、地銀の本業収益が劇的に改善する。利ざや改善に加え、貸出残高の増加と債券運用の見直しが同時に進む。
超低金利環境では、利ざやが極めて薄く、地銀は手数料ビジネスや有価証券運用に活路を見出さざるを得なかったが、金利上昇局面では収益拡大の機会が本格化する局面に来ている。
日銀は2024年3月にマイナス金利を解除後、同年7月に0.25%、2025年1月には0.5%へと段階的に政策金利を引き上げている。植田和男・総裁は12月1日の発言で、物価高対応、そして、賃上げ継続への自信を示し、今後も利上げ余地が広がる環境を示唆し、12月の金融政策決定会合においても利上げが実施されるとの観測が有力だ。インフレ時代、金利上昇は地銀のコア収益を押し上げる強力なエンジンといえる。
