習近平氏が執務できない状態になったら中国はどうなるか(写真/新華社=中国通信)
緊迫化する日中関係。台湾有事を危惧する声も聞こえてくるなか、今年は“超一強”体制を築く習近平・中国国家主席をめぐるさらに重大なリスクがあるという──社会学者の橋爪大三郎氏とキヤノングローバル戦略研究所上席研究員兼中国センター長の峯村健司氏がその衝撃シナリオを詳らかにする。【第3回】
ナンバー2を置かないナンバー1の弊害
峯村:日本にとっての最大のリスクは「習近平リスク」かもしれません。73歳を迎えるため、いつ何が起きてもおかしくない。今年開かれるであろう5中全会(党中央委員会第5回全体会議)でポスト習近平を示唆する人事が出るかどうか。注目度は極めて高い。
橋爪:習近平は後継者を置かずに3期目に入り、今に至ります。中国共産党にとって異例のことですが、それは「ナンバー2の危険性」を熟知しているから。毛沢東は権力を維持するためにナンバー2を何度も代えてきた。文化大革命では紅衛兵に序列2位の劉少奇を打倒させ、その後を継いだ林彪もクーデターを企てたとして亡命に追い込み、林彪は墜落死しています。
中国の歴史を見るとトップとナンバー2の間に必ず疑心暗鬼が生まれ、内部抗争が顕在化する。だから習近平は後継者を置かなかった。
峯村:現在、習近平と軍の間には隙間風のようなものがあり、自ら抜擢した幹部を次々に粛清しています。なかでも党中央軍事委員会の副主席だった何衛東を失脚させた影響は大きい。
2022年8月の台湾封鎖演習を海軍司令官として成功させた実績で3段跳びの昇格をさせナンバー2に据えましたが、台湾有事に関する習近平の指示に異論を唱えるなど“歯向かった”ことが原因ではないかと私は見ています。独裁はさらに強まっているのです。
橋爪:習近平が築いた独裁体制は、誰も過去やれなかったことをルール違反で実現した。これは大きなリスクになります。もし後継者が決まらないまま習近平が病気で倒れて執務できない状態になったらどうなるか。
峯村:本来なら序列2位の李強か、序列5位で最側近の蔡奇が動くことになりますが、いずれも習近平亡き後まで影響力を維持できるとは思えません。
結局、国内で何も決まらない状況が続くことになりそうです。
