「インターネットを自由に使える環境を両親が用意してくれたのが大きかったと思います。そこでネットオークションサイトなどを閲覧するうちに、ゲームなどの商品がこっちのサイトでは高額だけど、違うサイトでは安く買えることに気づいた。まだメルカリなどのフリマアプリがない時代、サイトによる価格差を利用した転売で利益を得ました。アルバイト禁止の学校で知恵を出してお小遣いを稼げたことが成功体験になり、将来は起業して売上を作れるんじゃないかという根拠のない自信が生まれました」
高校卒業後、1年の浪人を経て東京大学文科3類に入学。大学ではビジネスコンテストの運営サークルに参加した。小学生の頃に東大卒でライブドア創業者の堀江貴文氏が巻き起こしたホリエモンブームが原体験にあり、高校時代には同じく東大卒の笠原健治氏が立ち上げたmixiを愛用していた石川氏にとって、東大に入って起業を目指すことは自然な流れだったという。
サークルの先輩にユーグレナ創業者・出雲氏が
「サークルの先輩には、2005年にバイオベンチャーのユーグレナを立ち上げた出雲充さんがいます。ユーグレナの上場は、僕が大学1年生の時(2012年)でした。同じ東大卒とは言え堀江さんや笠原さんはテレビの向こうの存在でしたが、そうした先人に加えて出雲さんという身近な存在がいたことで、自分も東大に入れたのだから“世界を変えるサービス”を作るのも夢ではないと思った。起業や上場を目指して挑戦することがキャリアの選択肢になりました」
東大入学後、Facebookが圧倒的に普及するのを見てテクノロジーの力がないと事業を大きくできないと確信した石川氏は、3年次に文科3類から工学部に進む。勉強を重ねてIT分野の知識や技能を習得し、「日本のマーク・ザッカーバーグになる」との壮大な夢を掲げて2014年に起業した。弁当のデリバリーやポイントカードの統合アプリなどの事業を始めたが、まったくうまくいかず、失敗の連続だったという。この時期が起業家として一番苦しかったと振り返る。
「サービスがローンチされた時点で、頭の中ではユニコーン(創業10年以内で、10億ドル以上の評価額をつけられる未上場のベンチャー企業)になったつもりで、すぐに何百億円の売上が出るんじゃないかと思っていました(苦笑)。でも現実がそんなに甘いはずがなく、広がる妄想と実際の事業のギャップに苦しみました。
起業した時は周囲に『お前すごいな!』ってチヤホヤされるけど、自分が結果を出せない間に大学の同期の多くは卒業し、キラキラした大企業に就職して順調そうに見えるわけですよ。正直、自分も『もう就活しようかな』と音をあげそうになる反面、『負けなくない』という気持ちと、『自分ならもうちょっと何とかできるはず』という思いがありました」
切り口は「AI人材育成」
こんなはずじゃなかった……そう自信を失いつつ、2017年4月に東京大学大学院に進学した。どん底の3年間から反転攻勢するきっかけとなったのは、「AI」の最新技術と「人の意見を積極的に取り入れる」という謙虚な態度の“掛け合わせ”だったという。
「3年にわたる暗黒時代の経験から、自分の頭だけでアイデアを捻ってもうまくいかないことを学び、いろんな人の意見を素直に聞くようになりました。その中で交流のあるVC(ベンチャーキャピタル)の方から『AIというマーケットで勝負したら絶対に伸びる』との助言をもらった。当時のAIは飛躍的に性能が上がって注目されていた反面、どうすればAIを使えるかというデジタルテクノロジーを学ぶ場がなかったんです。学生時代の研究でAIを学ぶのに苦労した経験も原体験としてあり、アイデミーを立ち上げて、AIを学べるプロダクトを開発しました」