グループワークの落とし穴
エッセイストで、小学校英語指導者資格を持ち、教育や子育ての情報発信もしている藤井セイラさんはこう語る。
「近年、通知表の評価対象となった小学校英語は、徹底的にコミュニケーション重視です。異文化理解は多少深まっても、語彙や文法は家庭でアプリ学習や通塾をしないと身につけるのは難しい。
一方、中学英語は『小学校で語彙・文法を身につけた前提』でスタートします。中1英語のレベルが昔より上がり、家庭で英語学習をしていない子はついていけないかもしれません。格差が広がりやすい状況です。英語だけでなく、国語・算数の授業もコミュニケーション重視の傾向が強く、読み書き計算には親のサポートが重要だと感じます」
グループワークによるコミュニケーション中心の授業は、多くの教科で時間を占めるようになっている。中には1日のうち、3時間以上をグループワークにあてる小学校もある。
教育学のある論文には、「教師が一方的に講義をする授業よりも協働的な学習(グループワク)の方が学習の内容の定着がいい」とデータが紹介されている。一方で、保護者たちからは疑問の声も上がっている。
神奈川県に住む母親は公立小学校の授業参観を見て、不安になったという。この母親は大学時代、教育実習で小学校の教壇に立った経験がある。
「グループワークだと1人勉強ができる子がいると、その子が答えた正解が共有され、結果、誰がどの程度分かっているかいないかが把握しにくいと思いました。5つぐらいグループがあるのに、先生が1人しかいません。エスパーでもない限り、1人の先生が全部のグループの学習の中身を把握できるわけがありません。これで大丈夫なのでしょうか」
取材でグループワークの授業を何度か見学した。いつくかのグループが同時にワークをする。そのすべてを1人の教師が管理しているわけだから、1人1人の児童の理解度を見るのは困難だろう。
今回は教育指導要領で重視される「協働的な学習(グループワーク)」が学力低下につながっているのではないかという問題について言及した。次回記事では、教育現場でのグループワークの実態を見てみる。
■後編記事:《教育現場から考える》なぜ小学校のグループワークが「学力の低下」につながってしまうのか? 「分かったふり」をする児童を教師が見抜くのは困難、基礎学力の定着が疎かになる現実
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。