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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「お店の人への感謝と配慮を忘れないようにしたい」飲食店でバイトし始めた50代男性の意識の変化と、日々の生活にあらわれた“ポジティブ効果”

ベテラン店員からためになる指導も受けている

ベテラン店員からためになる指導も受けている

自宅でも率先して食器洗いをするようになった!

 他にも、Kさんが言っていたのは、「メニューの名称と実態を正確に書いた方がいいね」というのがありました。唐津名物の「魚ロッケ」という食べ物があります。これは、いわゆる「薩摩揚げ」(九州では「天ぷら」)にパン粉をつけて揚げたもの。これを単体で出すメニューがあるのですが、それとは別に、レタスと共にホットサンドにした一品もあります。メニュー表には「魚ロッケサンド」とあるのですが、本当は「魚ロッケホットサンド」(※焼き時間少々いただきます)と書いた方が正確かもね、ということでした。

 何しろホットサンドは焼く時間がかかる。しかし、客は「パンに挟めば終わりだろ!」なんて思ってるから「まーだーでーすーかーーー!」と言ってくることも。その時に「今、ホットサンドメーカーで焼いていますので、もう少々お待ちください」と説明する必要に迫られる。

 こうして、バイト経験を通して飲食店の大変さを知った今、別の店に行った時に従業員に対する配慮度合いを高めるようになったのですが、それ以外でもいろんな好影響がありました。

筆者がバイトしている「ちょこバル」

筆者がバイトしている「ちょこバル」

 店では客が帰った後、回収した食器をすぐに洗わなければなりません。テーブルはきれいに、シンクには食器が溜まらない状態にしなくてはならない。そのため、ヒマな時間などほとんどない状態で飲み物を出し、調理をし、食器洗いをするわけですが、なんと、自宅でも使った食器をすぐに洗うようになったのです。

 実は食器洗いは、私が最も嫌いな家事だったのですが、今はシンクに数枚の皿や茶碗があるだけで気持ちが悪い。即座に洗います。といった感じで、週1回のバイトとはいえ、飲食店で働く経験は、このように自分の人生にとって良い影響をもたらしてくれています。やはり、自分事にしないと、他人への感謝が生まれにくい、ということを実感しました。新しい経験は、こんな意識改革をもたらしてくれるのです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は稲熊均氏との共著『ウソは真実の6倍の速さで拡散する』(中日新聞社)。

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