ドライバーよりもパットを褒めろ
川淵キャプテンはプレー中、同伴者にさまざまなアドバイスをする。それも、上から目線の「どんなもんだ」「俺の言うことを聞け」といった感じではない。フェアウェイを歩きながら微笑を浮かべて話をする。聞いたことはプレー技術の向上にも役立つし、ゴルフをやっている時の話題にもなる。川淵さんのアドバイスのなかで、目からうろこだったのが「ドライバーショットよりもパットを褒めろ」という言葉だった。
「ゴルフをやっている時、みなさん、よくドライバーを何でもかんでも前に飛べばナイスショット!と褒めるでしょう。でも、それは言わないほうがいい。そんなに上手でない人でも、今のは芯に当たっていない、いつもより飛んでいない、いいショットでなかったことは自分でもよくわかっている。自覚しているわけです。第一、ワンラウンドで自分が満足できるショットなんてせいぜい2~3回あればいいほうなんです。だから上手な人には余計言わないほうがいい。ナイスオンはむしろ言うべきでしょう。しかし、ナイスショットは乱発しない。
歩きながら『いいドライバーを打ちますね』とか『いいアイアンショットをしますね』などと言うと、それを聞いたほうが力が入って、『次もまたナイスショットしよう』と思って力が入って曲がったり、チョロしたりすることになる。だから、ドライバーよりパットを褒めるほうがいい。パットがよかったときはいくら褒めてもその人のプレーに影響することはないから」
※『一流の接待』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
野地秩嘉(のじ・つねよし)/1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社、美術ギャラリー勤務を経てノンフィクション作家に。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞受賞。日本文藝家協会会員。『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『サービスの天才たち』『高倉健インタヴューズ』『トヨタ物語』『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』『伊藤忠 商人の心得』『東映の仁義なき戦い 吹けよ風、呼べよ嵐』『セカストの奇跡 逆襲のゲオ』など著書多数。