なぜ「森保一監督は接待がうまい」と思ったのか(Getty Images)
ビジネスパーソンにとって重要な仕事の場になる「接待」――。そこではそれぞれの教養や人間力が試されると説くのは、人物ルポルタージュや企業取材を数多く手掛けてきたノンフィクション作家・野地秩嘉氏だ。その野地氏が「ゴルフ接待において“神”と称された伝説の名人」とするのが、Jリーグの初代チェアマンなどを歴任した川淵三郎氏である。
「キャプテン」の愛称で知られる川淵氏は野地氏の取材に対して、7年にわたり日本代表を率いてきた森保一監督が「接待もうまいんじゃないか」と語っている。一体なぜか。野地氏の新刊『一流の接待』より一部抜粋、再構成して紹介する。
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川淵キャプテンはふと思いついたように言った。
「接待には向いている人とそうではない人がいる。いちばん向いているのはサッカー界では日本代表の監督をやった人かな」
どういう意味ですか? 川淵さんも代表監督をやったことがありますねと言ったら、長い答えが返ってきた。
「ゴルフの接待をやっていて、アドバイスをする人がいるでしょう。なんでもかんでも教えるような人は代表監督にはなれない。試合中に選手に伝えるアドバイスと同じで、なんでもかんでも言っていいわけじゃない。試合中に選手に伝える場合はポイントを絞る。代表監督は『今いちばん何が悪いか、ここを修正してほしい』という一点だけを伝えるべき。ゴルフの最中に、いろいろ修正してくださいと言ってもそんなことはできません。一度に3つも4つも指示を出すのはダメです。あれもこれもと多くのことを言ったら、かえって選手は何をすればいいかわからなくなり、アドバイスを受けないのと同じになってしまう。伝えるポイントはひとつだけ。これが原則。代表監督はそこをわかっているから接待ゴルフをうまくやるでしょう。試合中にはたとえば、『ボールを止めずに、ダイレクトでパスすることをもう少し意識しよう』といった具体的な指示をひとつだけするんです」
