企業自身で立ち上がろうとする力を引き出す制度
海外では税制(減税)を活用した経済回復の手法が提案されているが、日本国内においても、税制を活用した復興の素晴らしい効果は、すでに客観的で信頼性の高いデータによって証明されている。
独立行政法人・経済産業研究所が2026年に発表した、川上淳之氏、石田三成氏、岩崎雄也氏の3氏による論文『震災復興政策の長期的効果 東日本大震災後の雇用変動、設備投資に関する実証研究』では、東日本大震災の後に導入された企業の設備投資に対する特例措置について、詳細な分析を行っている。論文内では、減税の効果について次のように記述している。
〈復興特区制度の効果については、第37条の適用企業では、有形固定資産当期取得額が処置年に69%増加し、1~3年後も22~33%の増加が持続した。また、有形固定資産ストックについても処置後に13~21%程度の上昇が確認され、投資の増加が資本ストックとして蓄積したことが示された。〉
引用した文章が示す事実は非常に重要である。対象となる地域を絞って大胆な減税を行うと、企業はみずから機械を買い、工場を建て直すといった設備投資を活発に行う。設備投資が増える割合は減税適用初年度で約69%にも達し、高い投資意欲は数年間も持続する。減税という制度が、企業自身で立ち上がろうとする力を引き出している確たる証拠である。
被災した地域に莫大な税金を使って堤防を築き、企業に戻ってきてもらうのを待つ手法は、もはや理にかなっていないのではないか。提示した論文の調査では、津波の浸水が8mを超えた地域や、建物を建てることに制限がかかる災害危険区域では、震災直後の期間に企業の退出率が約75%という極めて高い水準に達したことも示されている。また、退出した企業の中には、生産性の高い優れた企業も含まれていた。企業は危険な場所から離れ、安全な場所で新しい事業を始めようと賢く動いているのである。
行政が担うべき任務は、誰もいなくなるかもしれない危険な場所に、巨大なインフラを再び造ることではない。企業がみずから安全な場所を選び、事業を再開するための資金を手元に残せるよう、減税で徹底的に支援することである。インフラ整備を必要最小限に抑え、浮いた予算を原資として、地域の経済活動を直接温めるべきである。インフラを縮小し、減税策と組み合わせる理念こそが、人々を救い、将来の世代に負の遺産を残さない、賢明で称賛されるべき復興の姿である。
事業所ごとの細かいデータを長年にわたって丁寧に追いかけ、客観的な数値に基づいて税制による支援の絶大な効果を証明した研究者たちの丁寧な分析と功績は、心から称賛されるべき素晴らしいものである。政治や行政を担う人々は、古いやり方に縛られず、数値化された事実を真っ直ぐに見つめ、経済的な合理性に基づいた復興政策へと進むべきである。
【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。