通信講座のみでも親のサポートで御三家に合格
大手塾の幹部でさえ「勉強が得意な子なら通信講座だけで御三家に合格する」と語っていた。通信講座の大手・Z会のウェブサイトには開成28名、桜蔭11名という合格実績が掲載されている 。ただし、Z会は通信講座だけでなく教室も運営しており、掲載数字が通信のみの結果とは限らない。5年生まで通信で対策し、6年生から教室通いに切り替えるケースもある。
それでも、通信講座のみで御三家などの難関校に合格するケースは確実に存在する。取材の中でも、塾なしで難易度の高い学校に合格した例に出会う。「地方在住で塾に通えないため、Z会の通信講座のみで対策し、御三家と同等の最難関校に合格した」「野球の練習・試合があったため四谷大塚の通信教育システム『進学くらぶ』のみで対策した。模試で偏差値が上がったので御三家を受けたら合格した」「メルカリで塾向けテキストを購入し、MARCHの付属校に合格した」――そういった話も聞く。
こうした成功例には、共通して保護者の強力なサポートがある。Z会の通信講座のみで御三家相当に合格した生徒の母親は、志望校の過去問を5年分、自分自身で解いたという。夫の転勤で地方に在住していた専業主婦の彼女は、子どもが6年生になった時点で「通信講座の内容が明らかにオーバースペック」と判断し、講座を解約。過去の教材のやり直しと志望校の過去問演習に絞った。
どこを重点的に学ぶか取捨選択できるというメリット
中学受験の通信講座は、Z会の進学コースと四谷大塚の進学くらぶが2大選択肢だが、どちらも大手集団塾と同等のカリキュラムで全範囲を網羅する。膨大な量をすべてこなすのは大きな負担であり、どこを重点的に学ぶか取捨選択できる保護者がいるかどうかが、塾なし受験の成否を大きく左右する。共働き家庭が増えている今、子どもの塾の宿題さえフォローしきれない保護者も多い。塾なしで対策しようとすれば、親の関与はさらに大きくなる。それが「塾なし受験」を成功させるための最大の条件といえるだろう。
一方、集団塾での難関対策にもデメリットはある。女子御三家を志望しているにもかかわらず、上位クラスにいるがゆえに、男子校トップの開成対策に巻き込まれるケースもある。志望校に関係なく、クラスのカリキュラムに入れ込まれてしまうのだ。通信講座のみの対策であれば、取捨選択ができるのでこうした過剰な対策を避けられる。
渋田さんが指摘するように、合否の鍵は「本人の得意科目と入試傾向のマッチング」だ。4教科を完璧に仕上げなくても、得意分野を伸ばすことで偏差値の壁を突破できる可能性がある。算数や国語の単科塾で得意科目を伸ばしつつ、他教科は通信講座や市販テキストで補うという組み合わせも有効だ。逆に苦手科目だけ塾を利用する方法もある。栄光ゼミナールは大手中学受験塾の中で1教科から受講できる数少ない選択肢である。
こうやって見ていくと、中学受験の対策もいろんな選択肢があると分かってくる。
塾で4教科受講するか、それとも通信講座で学ぶか、個別指導をどう利用するか。市販のテキストも優れたものも増えている。費用面、時間面、子どもの適性などを考えて、効率的な勉強方法を選択することが、合否を分ける鍵となるだろう。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(ともに青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも更新中。