脚の痛みを侮って放置すると、重病を招くリスクがある(イメージ)
歩行中に脚が痛み、休むと回復する「間欠性跛行」は老化現象のひとつと思われがちだが、脚の血管が詰まる「下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)」の典型的な症状でもある。放置すれば足の切断を招くだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の引き金にもなりうるという──。シリーズ「医心伝身プラス 名医からのアドバイス」、循環器病学、特にカテーテルを用いた低侵襲治療の権威として、長年血管内治療の最前線に立ってきた東邦大学医療センター大橋病院・中村正人教授が解説する。【下肢閉塞性動脈硬化症とそのリスク・前編】
喫煙・糖尿病・加齢がリスクとなる「下肢閉塞性動脈硬化症」
「歩き始めてしばらくすると、脚のだるさや痛みで歩けなくなり、休むと回復する」という症状は「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれます。これは、脚の動脈が狭くなったり詰まったりして血流が不足する「下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)」の典型的な症状です。歩行時の脚の筋肉は通常の200倍以上の酸素を必要としますが、血流が極端に減少して酸素供給が追いつかなくなることで、この痛みが引き起こされます。
実は、ASOで間欠性跛行が現われるのは3割から4割程度に過ぎません。残り6割の患者さんは無症状であったり、脚のしびれやだるさを覚える程度であったりするため、診断や治療を受けていない「潜在的患者」が多いのがこの病気の特徴です。しかし、ASOは他の動脈硬化性疾患である心臓の冠動脈疾患や脳血管疾患を合併していることも多く、症状の有無にかかわらず心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる事態を招くリスクが極めて高い「予後の悪い病気」であることを忘れてはなりません。
主なリスク因子は「喫煙」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常」「加齢」「肥満」ですが、なかでも重要なリスク因子は「喫煙」「糖尿病」「加齢」で、高齢化と糖尿病患者の増加に伴い患者数も増えています。心臓のカテーテル治療を受ける患者さんの平均年齢が70歳であるのに対し、下肢のカテーテル治療を受ける方は平均75歳と高く、老化が大きなリスク要因であることがわかります。
