2025年、ドイツでスパイ罪の有罪判決を受けた、中国出身の欧州議会議員の補佐官(写真/EPA=時事)
日本に対してさまざまな“スパイ工作”を仕掛けている中国だが、中東危機や迫り来る台湾有事に向けた動きにも中国スパイが絡んでいるという。世界各国での工作について、キヤノングローバル戦略研究所上席研究員兼中国研究センター長の峯村健司氏が明かす。【前後編の後編。前編から読む】
中国が狙うのは各国の「保守派」に対する工作
選挙などでSNSなどを通じた偽情報の拡散により、世論工作をして分断や対立を煽るのもスパイ活動の常套手段だ。
トランプとヒラリー・クリントンが争った2016年の大統領選では、「ヒラリー陣営の選対本部幹部がピザ屋の地下室で児童性愛者の組織を運営している」とのフェイクが拡散され、選挙結果を左右した。大衆の怒りの発火点となるようなクリティカルな議題について偽情報を国外から打ち込み、拡散させる世論工作は中国が得意とするところだ。
私自身、Xの投稿に対する誹謗中傷アカウントの開示請求を通じて中国の世論工作がどう行なわれるかモニタリングしたが、多くが、女系天皇の是非や夫婦別姓問題など、国民世論が割れやすいテーマに集中している。
分断を煽るうえで中国が狙うのは、各国の「保守派」に対する工作だ。
ドイツでは2025年、極右政党AfD所属の欧州議会議員の補佐官として勤務していた中国出身者が、500件超の欧州議会文書を盗んだとして拘束・起訴される事件が起きた。補佐官は2002年から中国スパイとして働き、AfDの政治家やドイツ国内にいる中国の反体制派に関する情報活動を行なっていたという。極右勢力は極端な思想を持っており、それを発信する力も強いため、分断工作に使いやすいと見られているのだ。
