トランプ大統領はホルムズ海峡の「逆封鎖」を宣言した(写真:AFP=時事)
依然として中東情勢は収束する兆しが見えていないが、今後の市場において懸念されるポイントはどこにあるのか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」、森口さんが解説する。
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週末(4月12日)に報じられた米イラン停戦協議の決裂は、マーケットに再び暗い影を落としています。再協議の可能性は残しつつも、戦闘開始から1ヶ月以上が経過し、「早期停戦」への淡い期待が剥落する中、事態は「一時的な軍事攻撃の応酬」から「長期戦」のフェーズへと移行しつつあります。
特に、トランプ政権が米軍によるイランの港湾封鎖を宣言したことは、原油供給への懸念を一層高め、原油価格の「高止まり」が常態化する可能性が浮上しています。この状況は、世界の経済、そして私たちの投資戦略にどのような影響を与えるのでしょうか。
原油価格が1バレル=100ドルを前後する水準が常態化すれば、経済全体に広範かつ深刻な影響が及ぶことになります。ここでは、特に懸念される3つのポイントを解説します。
【懸念1】コストプッシュ・インフレの定着
原油価格の高騰は、企業の生産コストを直接的に押し上げます。製造業においては原材料費や輸送費が増加し、サービス業においても光熱費や物流費が上昇します。
これらのコスト増は、最終的に製品やサービスの価格に転嫁され、物価上昇を加速させます。これは、需要の増加を伴わない「コストプッシュ型インフレ」であり、消費者の購買力を低下させ、実質賃金の減少を招く可能性があります。
FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする各国中央銀行は、このインフレを抑制するためには金融引き締めを選択せざるを得なくなり、景気回復の足かせとなるでしょう。
【懸念2】消費マインドの冷え込み
ガソリン価格の高騰は、自動車を運転する個人にとって直接的な負担となります。また、電気料金やガス料金の上昇は、家計を圧迫し、消費者の財布の紐を固くさせます。
これにより、食料品や日用品以外の消費が抑制され、小売業やサービス業の売上が低迷する可能性があります。消費の冷え込みは、企業業績の悪化を通じて雇用環境にも影響を及ぼし、景気後退をさらに加速させる悪循環を生み出す恐れがあります。
【懸念3】中央銀行の「手詰まり」感
物価高騰と景気後退が同時に進行する「スタグフレーション」の懸念が強まる中で、各国中央銀行は極めて困難な政策運営を迫られます。物価を抑制するためには利上げが必要ですが、それは景気をさらに冷え込ませるリスクを伴います。一方で、景気を下支えするために利下げを行えば、インフレをさらに加速させることになります。
FRBの「雇用の最大化」と「物価の安定」という2つの使命は、現在の状況下では互いに矛盾し、政策の選択肢を狭めています。この「手詰まり」感は、市場の不確実性を高め、投資家のリスク回避姿勢を強める要因となります。
