自分の意思を伝えることの大切さ
欧米企業や外資系企業では、上司から仕事が降りてくるのを待つのではなく、部下は自ら手を上げて、自分がやりたいと思う仕事に積極的に取り組むスタイルが求められます。そのためには、「自分はどんな仕事をしたいのか?」、「どうなりたいのか?」、「自分のキャリアをどう積み重ねたいのか?」など、部下は自分の意思を鮮明に言語化して、上司にハッキリと伝える必要があります。
部下が自分から上司に意思を伝えなければ、上司は部下のキャリアアップに適したタスクを指示したり、それをサポートすることができません。部下の思いを知らないままで仕事を続けたのでは、上司は自分の考えを一方的に部下に押し付けてしまうことになるのです。
モルガン・スタンレーに在籍した当時の自分を振り返ってみると、初めてグローバル企業で働くことで、日常的に緊張を強いられて、気持ちが萎縮していたのかもしれません。驚くほど有能な人たちに囲まれて仕事をすることに、コンプレックスや気後れを感じていたのかもしれません。
上司のアドバイスを耳にして、「そうだったのか!?」と一気に視界が広がりました。不安を隠して虚勢を張り続けていた僕の胸に、上司の言葉がストレートに突き刺さったのです。
上司の心優しい助言に導かれた僕は、その日を境にして、積極的に自分の意思を上司に伝え、時間が許される限り、前向きな議論を重ねるようになりました。そのおかげで、アグレッシブな気持ちで、仕事と向き合える日々が始まりました。「自分の意思を上司にハッキリと伝える」という新たな視点を手に入れたことで、仕事に対するモチベーションが爆発的にアップしたように思います。
その1年半後、仕事の成果が認められて、僕は出世をして、彼女のチームから離れることになりました。会社の上層部から、「まだ早いのでは?」という反対の声もあったようですが、彼女は、「私はあなたを支援しますよ」と微笑んで、優しく背中を押してくれました。
僕は今でも、「If you want something, ask for it」というフレーズを、彼女が授けてくれた大切なギフト(贈り物)と考えており、折に触れて、現在の会社のメンバーに語りかけています。成長過程にある部下にとって、上司と部下が腹を割って語り合うことは、上司が考えるよりも遥かに効果が高いように思います。
*ピョートル・フェリクス・グジバチ著『世界の一流は「部下」に何を教えているのか』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋して再構成。
(第3回に続く)
【プロフィール】
ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)/連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社GA Technologies社外取締役。1973年ポーランド生まれ。2000年に千葉大学研究員として来日。モルガン・スタンレーで組織・人材開発を担当後、グーグルで人材育成統括部長として、リーダーシップ開発と組織変革を統括。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。ベストセラー『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』『NEW ELITE』他、多数の著書がある。グローバル企業での豊富な経験を活かし、日本企業の組織変革や人材育成に関するコンサルティングを行っている。