上司と部下のダイアログが足りていない(イメージ)
日本企業には自分の意思やキャリアの方向性を上司に伝えられず、結果として「受け身」の姿勢に陥ったままの部下は多い。とはいえ、それをうまく引き出せる「優秀な上司」も存在している。彼らの共通点は何か。グーグル人材育成統括部長として活躍したピョートル・フェリクス・グジバチ氏による著書『世界の一流は「部下」に何を教えているのか』から、一部を抜粋して再構成。【全3回の第2回】
成果を出し続ける優秀な上司に共通すること
欧米企業や外資系企業の一流のマネジャーに顕著な傾向ですが、成果を出し続ける優秀な上司には、共通点があります。仕事に対するモチベーションの「原点」に目を向けて、上司と部下が腹を割って本質的な「ダイアログ」をしているのです。
「あなたにとって、仕事とは何か?」
「私たちの会社の存在意義は、どこにあると思うか?」
「この成果を上げることで、どんな社会貢献できるのか?」
上司にとっては、仕事に対するフィロソフィ(哲学)や人間性が問われることになりますが、折に触れて、お互いが「腹の底」を語り合い、考え方を共有することで、ビジネスパーソンとしてだけでなく、一人の人間としての成長を目指しています。
日常のコミュニケーションを通して、上司と部下が「垣根」を取り払うことで、信頼関係の熟成を図っているのです。
日本企業の上司と部下には、ダイアログが足りていないように思います。忙しい時間の中で、たとえ5分であっても、人間としての本質に関わる対話を交わすことに「煩わしさ」を感じているのかもしれません。子どもの頃ならともかく、いい大人になって、自分の未来を語ることに「照れ臭さ」を覚える人もいるはずです。
どんな理由があっても、チームや部下の成長を促すためには、ダイアログは不可欠と考える必要があります。
僕がまだ30代の若手社員だった頃のエピソードを紹介します。
その当時、僕はモルガン・スタンレーで組織開発の仕事を担当していました。30歳を超えたばかりですから、まだ尖っていて、頑固でプライドが高く、上司にとっては扱いづらい部下だったと思います。
僕の直属の上司は、ドーンさんというイギリス人の女性でした。圧倒的に仕事のできる厳しい人でしたが、2人の小さなお子さんを育てるソフトな語り口の優しい上司でもありました。彼女は時間が空くと僕に話しかけてきて、2人であれこれと雑談をしました。部下である僕のことを、本気で理解しようとしてくれていたのだと思います。
ある時、「あなたは何が欲しいのかわからない」という話になって、彼女にこんな言葉を投げかけられました。
「If you want something, ask for it」
日本語に訳すと、「何か欲しいものがあるならば、自分から求めなさい」という意味になります。
その頃の僕は、「自分がどうなりたいのか?」を上司に率直に伝えることはなく、自分の考え方や価値観について話し合うこともありませんでした。もしかすると、僕が社会主義や共産主義を経験したポーランドで生まれ育ったことも、少なからず関係しているかもしれません。人に全幅の信頼を寄せるという経験をあまりしてこなかったため、上司である彼女の目には、「ピョートルは自己開示が足りない」と映っていたのだと思います。
