「一日葬」だからといって“半額”になるわけではない(イメージ)
厚生労働省が2月26日に公表した人口動態統計によれば、2025年の日本の死亡者数は160万5654人。そうしたなかで、葬儀のカタチも変わってきており、通夜を省いた「一日葬」を選択する人が増えているという。当然、儀式を省略すればその分安く済ませることが可能だが、だからといって「半額」になるかといえばそうでもないようだ。よくある「一日葬」の勘違いを、葬儀業界歴約30年、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏が解説する。【前後編の前編】
ショートカットの「一日葬」にしても、安くならない
東京都で公務員として働く男性・篠原さん(58歳・仮名)の母親が1年の闘病生活の末、亡くなりました。葬儀は、以前から決めていた近所の葬儀社に依頼しました。
病院から自宅に遺体を搬送し、安置した後、さっそく葬儀社と打ち合わせが始まります。母親は高齢だったので、参列できる友人はほとんどいません。篠原さん自身も同僚にわざわざ参列してもらうのは気が引けたので、身内だけの家族葬を行うことにしました。
依頼した葬儀社は明瞭会計を売りにしているだけあって、祭壇、棺、式場使用料など個別の価格をしっかり見積書に記入してくれます。最終的に葬儀代金の合計額が出たのですが、それは「100万円もあれば十分かな」と考えていた篠原さんの予算を少しオーバーしていました。
その時篠原さんは、職場の上司が「お通夜をやらずにお葬式だけをやった」という話をしていたことを、ふと思い出したのです。
篠原さんの親族は高齢で遠方に住む人が多く、通夜と葬儀で2日間来てもらうのは負担を増やします。通夜を省けば、2日間かかるところが1日になります。親族の負担も減って、葬儀費用もかなり安くできるはずです。
「あのー、お通夜をやらないで済ますことってできますよね?」
「はい、一日葬ですね」
「それです。申し訳ないんですが、一日葬に変更して、見積もりを作り直してもらえませんか?」
数分後、作り直された見積書を見て篠原さんは目を疑いました。1割程度しか金額が下がっていないのです。通夜の料理代と、人件費の一部が省かれているだけです。「一日葬=安く済ませられる」という皮算用は大きく裏切られると同時に、篠原さんにはふと疑問も浮かびました。
「大して安くもならないのに、なぜ、『一日葬』を選ぶ人がいるのだろう?」
