料金トラブルが絶えない葬儀料金(イメージ
厚生労働省が2月26日に公表した2025年の人口動態統計によれば、2025年に亡くなった人の数は160万5654人。毎日どこかで葬儀が行われるなか、「葬儀費用が見積もりの金額を上回ってしまった」というトラブルは少なくない。
実際、国民生活センターには、葬儀サービスに関する相談が数多く寄せられる。目立つのは「ホームページ記載の金額よりも高額になった」「葬儀会社からよく説明されず余計なオプションを付けられた」など、やはり金額に関する訴えだ。なぜ葬儀費用は“想定”よりも高くなってしまうのか。葬儀業界歴約30年、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏が、そのからくりを解説する。【前後編の前編】
「業界最安値」の落とし穴
「恐れ入りますが、葬儀屋さんはお決まりですか?」
神奈川県川崎市に住む男性・Aさん(55歳/メーカー勤務)が、病院から父の訃報連絡を受けたのは、月末も近い木曜日の深夜のことでした。長期入院中で先は長くないと覚悟していましたが、とはいえ思ったよりもその最期は早く訪れました。亡くなると病院にずっと安置させてもらうことはできません。
病院に駆けつけたAさんは、看護師から冒頭の質問を受け、慌てて霊安室でスマホを開き、「葬儀 川崎市 安い」と検索しました。葬儀をするにあたり、“ムダにお金をかけたくない”というのは生前から父と話していたことです。
何社も葬儀社が表示されるなか、大きく「家族葬 49万円から」として「業界最安値」「明朗会計」などという文言のあった葬儀社に依頼することにしました。
金曜日になって父の遺体を自宅に搬送後、慌ただしく打ち合わせが進みました。その時点での見積もり金額は61万3000円。サイトの表示価格より12万円ほど高い金額です。しかしAさんは父の死のショックや、慣れないことが続いたせいで、とても疲れていました。早く手続きを終わらせたいと考えたAさんは「オプションが付いてるわけだし、これぐらいのオーバーは仕方が無い」と割り切ってサインをしました。
その後、無事に葬式を終え、やっと一息ついた翌日、葬儀会社からの請求書を見てAさんは固まりました。請求金額は74万3200円。61万3000円よりさらに13万円アップです。内訳を見ると、Aさんの想定外だった会葬返礼品の追加分4万4000円、料理の増加分3万3000円などが並んでいます。
Aさんはあわてて葬儀社に電話しました。すると担当者は、淡々とした口調でこう言いました。
「普通はこれくらいの追加料金が発生します。ご理解いただいた上でサインをされたのでは?」
Aさんは納得いかなかったものの、一度しかない父の葬式のことでもめたくなかったので、しぶしぶ請求書通りの代金を振り込みました。
前述した国民生活センターの公表資料によると、葬儀サービスに関する相談件数は2022年度951件、2023年度886件、2024年度978件と高止まりしています。最近の事例として、ホームページ記載の金額よりも高くなったケースや、想定外のオプションを付けられたケースが掲載されています。Aさんが経験したような見積もり金額をめぐるトラブルは、決して珍しいことではありません。
ではなぜこのように、葬儀費用が見積もりの金額より高くなるトラブルが発生するのでしょうか。これには複数の理由があります。
