民法では、すべての形がある物を土地や建物などの不動産と、それ以外の動産に区分しています。不動産は必ず誰かの所有であり、所有者がいなければ国に帰属しますが、小石や昆虫の抜け殻のような動産には所有者不在の「無主物」があります。そして、無主物はこれを我が物として占有する人の所有物になります(無主物先占)。
では、どんな物が無主物かといえば、かつては誰かに所有されていたが捨てられた、即ち所有権が放棄された物や最初から誰の所有でもない野生の動物など。よって昆虫の抜け殻は無主物といえるので、持ち帰っても問題ありません。
次に小石ですが、もともと岩石が加工や風化などで分離したもの。岩石は土地に全部、又は一部が埋まっていて土地の構成物ですから、土地所有権の対象です。仮に岩石を削って小石を採れば所有権の侵害といえます。しかし、風化などで岩から完全に離れて小石になった場合、価値がある石なら柵で囲み、採取禁止の表示がされているはず。そのような措置が講じられないまま地表に転がっている小石は、もとの岩石に所有者がいたとしても所有権を放棄したと評価でき、持ち帰っても心配いりません。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2026年6月5・12日号