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キャリア
アメリカの大学の「格」と「カテゴリ」

アメリカの大学はなぜ偏差値で序列化できないのか? ハーバードに代表される「アイビー・リーグ」だけではないトップ大学群の数々、安易な序列化を阻む各大学の個性

名門・ハーバード大学

名門・ハーバード大学

 アメリカの大学入試では、学力試験だけでなく、部活動や課外活動、ボランティア経験、面接などを通して受験者の「全人格」が評価されると言われる。背景には、「一度のペーパーテストでは人間の能力は測れない」という価値観と、社会に貢献する人材育成への信頼がある。そこに、日本のような大学の“偏差値序列”は存在しないという。

 グローバル社会の教育観をもとに、AI時代に求められる人材像とは――。アメリカ在住の作家・ジャーナリストの冷泉彰彦氏の著書『世界の一流は「子ども」に何を教えているのか』より、一部抜粋・再構成して紹介する。【前後編の前編】

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AI時代にも通用するアメリカの大学の「人の選び方」

 ここでは、アメリカの大学入試の考え方について見ていきます。もちろんこれは、あくまでアメリカ特有のものであるのは間違いありません。ですが、21世紀の現在、そしてAIが人間の頭脳労働に取って代わろうとしている時代、人間がAIの届かない高度な判断を担っていくには、アメリカの大学が持っている大学教育の考え方は、十分に意味があると考えられます。

 なぜか? 人材観の部分に加えて、選抜の具体的な方法を見ることで、子どもへどんなメッセージを出したらよいかが、より具体的に見えてくると思うからです。

 初級の頭脳労働はAIに負けるかもしれません。ですが、AI時代だからこそ、残っていく人間の頭脳労働もあります。

 アメリカの大学は、これに100%の答えを持っているわけではありませんが、世界の中で最も近い答えを持って教育をしているのは事実だと思います。そして「AI時代でも活躍できる人間をどう選抜しているのか」という観点で見ると、さまざまなことを示唆しているのです。

 アメリカの大学入試は、一言で言えば「全人格を判定するもの」です。もちろん、高校の成績表や、大学進学希望者を対象とした全米共通の標準学力テストである「SAT」などの成績も評価されます。ですが、それに加えて履歴書の部分では、部活動や課外活動の履歴も重視されます。また、ボランティア経験なども重要です。さらに、多くの名門大学は面接試験も行っています。

 その全体像はベールに包まれており、たとえば要素別に点数を計算して合否を決めているという内部の証言はあるのですが、各校はその厳密な基準は明らかにしていません。

 日本で比較するのであれば、どちらかと言えば、大学入試よりも「就職活動」に近いイメージかもしれません。ある意味では、主観的な判定をしているのです。

 では、アメリカの社会はどうして、こんな「主観的な合否判定」を受け入れているのでしょう?

 2つ理由があります。

 1つ目は、過去200年以上の大学教育の歴史の中で、この方法がうまく機能してきた、優秀な人材を選抜して育ててきたという実績があるからです。何よりも、「社会の役に立つ人材」を選んで育ててきたわけで、「アメリカの繁栄はアメリカの大学教育の成果だ」という考え方があります。

 2つ目には、アメリカの社会には、「1回のペーパーテストで判定できるのは人間の一部の能力」だから、もっと総合的な判定をして、人間の能力を多角的に検証しないと、逆に「不公平」だという考え方があるからです。こうした考え方が根づいているということが背景にはあります。

次のページ:明確な「序列」のないアメリカの大学

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