トランプ大統領の支持集会で拍手をするキリスト教福音派の人々(時事通信フォト)
初期のキリスト教会では否定されていた「富の蓄財」は、十字軍遠征や宗教改革などの歴史的事件を経て解釈が変わった。『危機管理の日本史』などの著書がある歴史作家の島崎晋氏は、キリスト教における「お金」の位置付けは、やがて資本主義社会を発展させる思想的・宗教的背景へと変わったという。現代に至り、アメリカの「福音派」はトランプ大統領の有力な支持基盤の一つにまでなった。アメリカにおけるキリスト教福音派の行方について、島崎氏が考察する。【前後編の後編。前編から読む】
寄付や慈善活動による「罪の意識」からの解放
宗教改革初期の指導者として知られる神学者ジャン・カルヴァン(1509〜1564年)が提唱した、富を「貧しい人の扶助」に使用することは、「社会への還元」と言い換えてもよい。富裕層は財産の一部を社会に還元することで罪の意識から解放され、天国へ一歩近づく。施しを受ける側も富裕層が天国へ行く手助けをしているのだから、後ろめたさを感じる必要もない。
富裕層が寄付や何らかの慈善活動をすることによって、ウィン=ウィンの社会を築くことができる。この思想は、資本主義の暴走を孕みながら、西欧キリスト教世界による世界制覇を根底から支える原動力ともなった。
西欧列強ではどこも貴族や資本家による慈善活動が定着し、プロテスタントを中心に建国されたアメリカでも社会全体に寄付文化とボランティア活動が根付くこととなった。この文化はギリシア語の「フィリア(愛)」と「アンソロポス(人類)」を合わせた、「フィランソロピー(人類愛、博愛)」という新語をも生み出した。
その最先端をいくのが、グローバル資本主義の元締めとして発展したアメリカだ。現在では世界の慈善寄付総額約5300億ドル(約82兆1500億円)のうち、実に約40%がアメリカによって占められているとの指摘もある。
アメリカで寄付文化がここまで根付いた理由はいくつも挙げられる。家庭と学校を通じた幼少期からの寄付の重要性を説く教育、寄付を社会的責任と捉えてその行為を称賛する社会風潮、寄付を自らの美徳や規範とする富裕層の矜持、多様なボランティア機会の存在、税制上のメリットなど。その背景に、カルヴィニズムの影響があるのは間違いないだろう。
「草の根保守」「テレビ伝道師」の登場で潮目が変わった
合衆国憲法に政教分離が明記されていることもあり、アメリカのキリスト教団体が組織的に政治活動をすること、圧力団体として行動する例は長らく見られなかったが、1970年代から潮目が変わった。「草の根保守」と呼ばれる共和党支持者による地道な働きかけやテレビ伝道師という新しいタイプのアジテーターの登場により、福音派が一致して共和党候補に投票する傾向が強まり出したのである。
1980年の大統領選挙でのレーガン氏、2000年のそれでのブッシュ氏(子)の勝利は、福音派を含めた宗教右派の帰趨に左右された面が強い。同様の傾向は、ドナルド・トランプ氏の勝利に関しても見て取れる。
