台湾を訪れたエヌビディアのジェンスン・フアンCEO(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今月、台湾で行なわれたNVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアンCEOの講演内容を踏まえて、同社のPC向けCPU市場参入の意味について考察する。
PCは“単なるコンピュータ”ではなくなる
台湾の対外貿易発展協会と台北市電脳商業同業公会が共同で開催するICT産業展示会「COMPUTEX2026」とNVIDIAが開催するAIカンファレンス「NVIDIA GTC」がコラボすることになり、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは6月1日、台北市を訪れ、2時間余りの講演を行った。
PC向けCPU「RTX Spark」、データセンター向けCPU「Vera CPU」の説明や、AIデータセンター向けのGPU・CPU統合型「Vera Rubinプラットフォーム」の量産計画、フィジカルAI、ロボティクスなどの基盤となる技術の紹介、年間1500億ドルの台湾への投資公約など、話題は広範な分野に及んだが、最も注目されたポイントは“AIエージェントの時代が到来した”とジェンスン・フアンCEOは確信しており、PC半導体市場に本格的に参入し、PCを“単なるコンピュータ”から“AIエージェントを内蔵した自律型デバイス”へと再構築しようとしている部分だろう。
2025年11月の「Open Claw」公開をきっかけにAIエージェントの普及が急速に進んでいるが、AIエージェントを利用するには、様々なソフトウエアを使い分け、複雑な命令を正確に実行させる必要がある。スマホやタブレット、或いはスマートグラスでも使えないことはないが、長文でコマンド入力するにはPCの方が圧倒的に使いやすい。
加えてスマホ用OSは、安全性をより重視した設計となっており、厳格なサンドボックス環境(ユーザーが通常利用する領域から隔離保護された仮想領域)を利用するメカニズムが採用されている。そのため、アプリケーション間のデータのやり取り、操作はその分、大きな制限を受ける。それに比べWindowsは開放度が高く、PCはAIエージェントをシステムの深い部分まで操作できるといった決定的な違いがある。
一方、PCにも不便な点がある。AIエージェントの大脳に当たる部分、つまり、大規模言語モデルによる推論、複雑なプランニング、大量の検索などはクラウドに依存しており、個人情報が流出したり、ウイルスに感染したりするリスクは依然として残る。クラウドに依存する以上、ネット環境での利用が不可欠だといった不便さもある。こうした点を劇的に改善するために、NVIDIAは高性能CPUを搭載することでAIをダウンロードしてスタンドアロンで動かすというソリューションを提供しようとしている。
