事件の関与を明かした北田文明(右から2番目)
地主になりすまして他人の土地を売り飛ばし、カネを騙し取る──「地面師事件」と呼ばれるグループ犯罪は、ネットフリックスのドラマが大ヒットして注目された。モデルになったのは2017年、積水ハウスが五反田の一等地に佇む老舗旅館「海喜館」を巡り、地面師たちに55億円を詐取された事件である。
ライターの河合桃子氏が取材した実行犯「カトウ」は逮捕当時、「連絡役」と報じられた男だった。その告白から事件の実態に迫る『地面師連絡役カトウ』は第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞、6月18日に刊行された。
カトウを含む17人が逮捕された本件だが、今も残る謎は詐取金55億円の行方だ。その詐取金の口座の用意に関わったのが、佐々木利勝と北田文明であり、いずれも不起訴処分になっている。現在、別件で受刑中の北田が、獄中から55億円について明かしたのだった──河合氏がレポートする。【シリーズ第3回・前中後編の中編。前編から読む】
積水ハウス55億円詐欺事件「地面師たちの人物相関図」
「すべてを話せば有罪になった」
佐々木に口座を用意した北田とは何者なのか。北田は積水詐欺事件では不起訴となったが、別件の地面師事件で受刑中の“大物”だ。私は北田に事件について往復書簡で取材を行ないながら、面会も叶った。
北田には「カミンスカスが獄中で無罪を訴えていることをどう思うか」などを聞きつつも、自身の事件への関与も聞いた。
北田は「法的に今から起訴されることはないとはいえ、すべてを話せば有罪になった。その意を理解し、守ってもらえるならお答えします」と慎重な返答だった。その上で、積水詐欺事件の発端とカミンスカスの無罪の訴えをこう否定した。
《もともと、あるブローカーが本件を土井のところに持ち込みました。そして土井が前周りとして小山(筆者注:カミンスカスの旧姓)を動かし始めます。(略)小山が迷走しないようにと考えた私は土井とマイクを合わせることにしました。
土井、マイク、私の3人で余計な人間を排除し、すっきりとした関係でストレートに作業を進められるようにしたのです。この時点で土井も、ニセ地主だと気付いていました。そして土井の指示で小山はマイクと会うことになります。こうした流れで進んだ案件。小山が何も知らなかったという事はないですよね》(2025年3月27日消印)
自身の関与はこうだ。
《この事件は土井とマイクの強い目的意識を受けて、私が協力した仕事です。最初から刑事事件になることを確信していた私は一切おもてに出ず、いくつかの大きなポイントでのアドバイスと手配に徹しました》(2025年3月27日消印)
主犯の土井と内田を引き合わせたのが北田であり、実行のアドバイスをしたという。北田が事件を采配した“黒幕”であることの告白とも読める。

