「国力」強化には程遠い?(イラスト/井川泰年)
8割超の自民党議員で発足した「国力研究会」。この議員連盟で議論されるのは「憲法改正」「皇室典範改正」「対中戦略」「核抑止」など、国論を二分するようなテーマが中心になるという。一方で経営コンサルタントの大前研一氏は、「真に取り組むべき喫緊の大問題を、ものの見事に外している」と指摘する。国力研究会の何が問題なのか、大前氏が分析する。
「国力研究」としてはピント外れな議論
これまで高市早苗首相が繰り返し編成の必要性を否定してきた2026年度の補正予算が一転、成立した。中東情勢の長期化に備えることが目的で、総額3兆1135億円の内訳はガソリン代などの燃料費補助の継続に充てる「中東情勢等対応予備費」が2兆5000億円、7~9月の電気・ガス料金を支援する「予備費の積み増し」が5135億円、地方自治体が地域の実情に応じて使える「重点支援地方交付金」が1000億円となっている。
しかし、その財源はすべて子や孫など将来世代にツケを回す赤字国債(借金)だ。すでに国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」は2025年度末時点で前年度末より20兆1271億円増え、過去最大の1343兆8426億円に達した。これは日本のGDP(国内総生産)の2倍以上である。2026年度末はさらに増えることが確実であり、高市首相の「責任ある積極財政」は「無責任な放漫財政」でしかない。このままでは円安がいっそう進むだろう。
そんな高市首相を支える自民党有志の議員連盟「国力研究会」が5月に発足した。発起人は麻生太郎副総裁や昨年の総裁選立候補者ら11人で、入会者は自民党議員の8割超を占める大所帯になった。「長い物には巻かれろ」ということなのだろうが、その検討テーマは甚だ疑問である。
時事通信社の報道によれば「国力研究会」の“仕掛け人”とされる山田宏参議院議員は、国論を二分するテーマ、とくに「憲法改正」「皇室典範改正」「対中戦略」「核抑止」などの大きな問題について議論するための場だ、と述べている。
しかし、対中戦略はともかく、それ以外は十年一日のテーマだ。たとえば、憲法改正の自民党草案は「第9条に自衛隊の明記と自衛権の言及」「国会や内閣の緊急事態への対応を強化」など2012年に決定されたもので、新たな争点もない。
皇室典範改正も、安定的な皇位継承に向けた皇族数確保策として衆参両院の正副議長が【1】女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する【2】旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える――という2案を「了」とする「立法府の総意」を取りまとめたのだから、それを国会で粛々と議論すればよい。
憲法改正や皇室典範改正は国民の意見を聞きながら時間をかけて合意形成を図らなければならない重要な問題ではあるが、「国力研究」としてはピント外れだ。
