MARS-1の中央制御装置。座席指定情報を自動的に管理する。写真提供:日立製作所
画期的な発案と技術的な挑戦
そこで発案されたのが、MARSだった。発案者は、国鉄の鉄道技術研究所(現・公益財団法人鉄道総合技術研究所)の穂坂衛博士だ。
ただし、当時は、現在のパソコンのような情報処理能力が高いコンピューターはなかった。集積回路(IC)はまだ試作段階で、実用化されていなかった。大容量の情報を記録できる媒体といえば磁気ドラムメモリで、のちに登場した磁気ディスク装置よりも記録容量がはるかに少なかった。
そのような時代に、穂坂氏は、コンピューターを活用したシステムを構築し、航空機の座席予約よりも取扱件数が多く、多様な座席に対応することが求められる国鉄の座席予約管理を自動化しようと考えた。また、万が一の故障に備えて、回路を二重系化しようと考えた。その取り組みは技術的な挑戦であり、その先のコンピューターの発達を見据えていた点においても画期的だったと言える。
MARS-1の端末(操作卓)。東京駅にて1960年撮影。画像出典:RRR, 2018.2, 39
先述の記念式典で行われた講演会では、この取り組みの背景だけでなく、少し人間臭いエピソードも語られた。世界に前例がないシステムを開発する舞台裏には、それなりのドラマがあったようだ。
MARS-1の開発では、論理設計を鉄道技術研究所が、回路設計・製作を日立製作所がそれぞれ担当した。その完成から現在に至るまでの60年以上の間に、MARSは改良を重ねながら進化した。国鉄分割民営化後は、MARSの開発が鉄道情報システム株式会社(JRシステム)に受け継がれ、現在に至っている。

