不動産開発業者側は長いスパンで街の繁栄を見据えるが、住民側には生活環境の変化への不安がある。計画通りに進めば、駅前には複数のタワマンが誕生することになるが、実現には課題が多い。
「一帯には、昭和の雰囲気が漂う居酒屋や木造住宅がたくさん残っています。防災や耐震面にリスクがあり、ハザードマップでも危険性が指摘されていて、再整備が必要なのは明らかです。しかし、百戦錬磨のデベロッパーでも音を上げそうなぐらい権利関係が複雑で、調整には相当な時間がかかるでしょう。
近年ではインバウンド客が訪れるようになり、昭和の雰囲気が残る街としてちょっとした名所になっています。大規模再開発が本格化したら、街の外に住む人からも反対の声は上がるかもしれません。駅前にタワマンができても商業ゾーンはごく一部なので、住民にメリットはあまりない。それでは再開発の気運は盛り上がりません」(同前)
駅の反対側でも再開発の噂が…
こうした状況に翻弄されているのは、駅前で営業する飲食店のオーナーたちだ。地元で3代にわたって商売を営む50代男性・Tさんが匿名を条件に語る。
「駅前は小さなお店が集まり、店主同士のつながりも強い地域です。最近話題になるのは決まって再開発のこと。『不動産業者が◯◯円で買い取りに来た』『あそこは立ち退きが決まっているらしい』『対象エリアはどこか』とか、そんな話ばかりです。実際には、不動産価格の上昇に合わせて家賃の値上げを求められただけなのに、『追い出しだ』とうろたえる例もあります。噂が噂を呼び、誰もが疑心暗鬼の状態で、私自身も時々『本当は何か知っているのでは?』などと尋ねられます」
さらに複雑なのは、駅の反対側でも再開発の噂が出ていることだという。飲食店で働く40代女性・Sさんが言う。
「反対側も古い建物が多く、いつ再開発の計画が持ち上がっても不思議ではありませんが、商店街を統括するような人に話を聞いても『具体的な計画は一切ない』というんです。それでも不安を拭いきれず、一部の商店主から反対運動を始めようという動きが出始めています。商店街と関係が深い地元選出の区議とかに相談するんじゃないでしょうか。しかし、そういった話が出てくれば、水面下で再開発の動きが進んでいるのでは”と疑う人はますます増えるわけで……」