もっと恐ろしいデータもあります。東京都生活文化局消費生活部が2002年に発行した『流通構造等分析調査 葬儀にかかわる費用等調査報告書』によると、施主の2%は「価格や見積りについての話は何もなかった」と答えているのです。
以前この連載で「葬儀屋さんは説明が下手」ということを述べましたが、葬儀が終わってから言い値で支払わせていたなら、説明の上手い下手以前の問題です。そもそも説明なんてする気がないわけですから。
こんなやり方が通用するなら、倫理観のないスタッフはやりたい放題だったでしょう。 遺族をだまして大金を手に入れることが可能な業界には、それをやりたがる倫理観の無い人が集まってくるというモラルハザードが起きるのです。
この当時も国民生活センターは相談件数を集計していますが、2002年の相談件数はたったの154件でした。死亡者数が現在より少ないことを割引いても、非常に少ない件数です。当時、消費者が「葬儀社なんてそんなもの」と思っていたか、消費生活センターの存在を知らず泣き寝入りするケースが多かったのでしょう。
この当時施主を経験して、葬儀業界にネガティブなイメージを持つ人がいるのは無理もないことだと思います。
悪質な葬儀社はかなり淘汰されてきた
しかしその後、業界は「浄化」されていきます。とんでもなく悪い人は、元気になる違法な薬を打ったり、会社の金を使い込んだりして、塀の中にいきました。そこそこ悪い人はバブルが崩壊して、以前ほど儲からないと気づき始めると徐々にいなくなっていきました。上場した葬儀社が大卒の募集を始めたり、教育や育成に本腰を入れたりしてイメージアップをはかり始めたのもこの頃です。サービス業として“人の役に立ちたい”というごくまっとうなスタッフが、次第に増えていきました。
2000年代から2010年代にかけて業界の倫理観や説明の技術はかなり改善し、悪質な葬儀社はかなり淘汰されたと思います。この時期の死亡者数に占める国民生活センター相談件数の比率も、今と比べてかなり低いです。
ところが2020年頃になって、またもや状況は悪化してしまうのです。
後編では、なぜ2020年頃から悪化したのか、葬儀業界で起きた変化と構造的な問題を解説します。またその状況でトラブルに遭わないためにはどうすればいいのかもアドバイスします。
▼▼▼後編記事▼▼▼
【つづきを読む→】「かつては3週間連続出勤で、その間に36時間勤務を4回…」葬儀業界に押し寄せた働き方改革の波 分業制導入がトラブルにつながる弊害も
【プロフィール】
赤城啓昭(あかぎ・ひろあき):1級葬祭ディレクター。葬儀業界歴約30年。運営する「考える葬儀屋さんのブログ」は月間45万PVを達成し、ライブドアブログ OF THE YEARを受賞。近著に「子供に迷惑をかけないお葬式の教科書」。テレビ、新聞、雑誌、YouTubeなどでも葬儀現場の正しい情報をわかりやすく発信中。
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