それでも自筆証書が財産目録部分を除き、全文自筆であることに変わりはなく、修正などの方式にも規制があり、文書作成と校正が自在にできるPCが文房具並みに普及している今日では、時代遅れの感が拭えませんでした。
そこでデジタル技術の進展・普及に対応し、自筆証書の負担を軽減すべく創設されたのが、保管証書遺言なのです。これはパソコン等を用いて作成した遺言のデータや印刷した紙を法務局に提出し、遺言の保管を申請する方式となります。しかも、直接法務局の窓口に行かなくても、オンラインでの申請ができ、遺言内容の口述もウェブ会議の方式で対面して実施することが可能となり、利用しやすくなっています。
この制度では遺言者の申し出により、死亡時に相続人等への遺言書保管が通知されます。保管証書遺言はデータや紙の状態で法務局に保管されるため、改竄や紛失が防止できます。また、家庭裁判所の検認も不要です。
以上の制度は改正法が公布された日から3年以内に施行され、それまでに法務省令で手続きの詳細が決定します。なお、今回の民法の改正では遺言書への押印が任意になりました。こちらは1年以内に施行されます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2026年9月18日号