スーパートールワゴン+両側電動スライドドアという、日本で最も支持率の高いセグメントにBEVモデルとして挑んできた「ラッコ」。フロントマスクはBEVらしく、大きなラジエターグリルなどもなく、すっきりとしたデザイン。
海外メーカーとして初めて、日本独自の軽自動車規格に合わせて開発されたBYD「RACCO(以下、ラッコ)」。同車にはBYDならではの独自のバッテリー技術が満載だが(前編記事参照)、はたしてその乗り心地はどうなのか。後編では、航続距離320kmを実現した最上級グレード「300Premium」を実際に走らせ、その乗り味と実用性を検証する。静かで滑らかな走り、広い室内、工夫を凝らした後席──初めて手がけた軽自動車とは思えない仕上がりの一方、販売・整備網や細部の質感、リセールなどの課題も残る。それでも日本メーカーが「お手並み拝見」と、ゆったりと構えてはいられない理由とは。自動車ライターの佐藤篤司氏がレポートする。【前後編の後編】
絶対王者「N-BOX」を徹底研究したか
前編記事ではラッコの立ち位置や特異性について説明してきました。次は、走行距離や実際の乗り心地を見ていきます。
3タイプ用意された「ラッコ」のグレード別に、満充電からの走行距離を見てみましょう。ベーシックな「200(214万5000円)」は“22.4kWhバッテリー”を搭載し、WLTCモードで210km。中間グレードの「300Plus(239万8000円)」と、今回試乗したトップグレードの「300Premium(249万7000円)」は“35.84kWhバッテリー”を搭載し、WLTCモードで320kmという走行距離を実現しています(価格はいずれも税込み)。
NMCを搭載する日産「サクラ」の駆動用バッテリー容量は 20kWh で、満充電からの走行距離はWLTCモードで 180km となっています。もちろんサクラの駆動用バッテリーでも日常の買い物や通勤などでは不満はありませんが、「ラッコ」はそれ以上の走行可能距離を独自開発のブレードバッテリーで実現したことになります。
こうしてBYDの最先端技術を惜しむことなく投入し、仕上げた「ラッコ」ですが、その走りや実用性についてチェックすると、日本のスーパーハイトワゴン系を良く研究していることが分かります。
とくに強く意識した軽自動車といえば、年間に20万台あまり販売する絶対王者、ホンダの「N-BOX」を参考としたであろうことは、容易に理解できました。例えば50:50の分割式リアシートは座面のチップアップとダイブダウン機構が備わっていますが、これも「N-BOXと同じ仕組み。大きくスライドするリアシートは座面を大きく跳ね上げることが可能で、子供なら立ったままでも着替えが可能です。これはセンタータンクレイアウトのN-BOXにとっての得意技ですが、「ラッコ」も統合型EVユニット「X-PACK」をボディ中央部の床下に配置できます。そのお陰もありボンネットを開けると、下の方にちょこんとモーターがあるだけ。つまり衝突などの際に潰れることで衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンを、ゆとりを持って確保でき、軽自動車トップクラスの室内空間も実現しています。
