十両昇進へと進む旭富士
西幕下筆頭のモンゴル出身力士・旭富士(24)が9月場所の初日に白星を飾り、新十両へ向かって順調にスタートを切ったと思われた。だが、2日目に事実上の十両との入れ替え戦となる東十両14枚目の栃大海に敗れて1勝1敗となったが、あと3勝すれば十両昇進が見えて来る。部屋の関取衆と互角の力を有する“史上最強の新弟子”が角界デビューしたのは昨年の11月場所。先代の伊勢ヶ濱親方(元横綱、現・宮城野親方)の現役時代の四股名である「旭富士」を継承しての初土俵だった。横綱の四股名を名乗って初土俵を踏むのは、小錦以来43年ぶりのことだった。そこからスピード出世を果たし、ついに大きな「土俵に埋まるカネ」に手が届くところまできた。
前相撲は3連勝してトップで新序出世を決めると、1月場所は7戦全勝で序ノ口優勝。続く3月場所でも7戦全勝で序二段優勝を果たし、三段目に昇進した5月場所も7戦全勝と負け知らずの21連勝を飾った。
東幕下11枚目に番付を上げた7月場所では9日目に元十両の生田目に敗れたために25連勝でストップしたが、7人の優勝決定戦を制して年6場所制で初の4階級連続制覇を飾って勝ち越せば十両昇進となる幕下筆頭まで番付を上げた。相撲担当記者が言う。
「9月場所で勝ち越せば、所要6場所での十両昇進というスピード出世となる。ただ、旭富士は高校卒業後の2021年3月に伊勢ヶ濱部屋に入門したが、部屋には照ノ富士(現・伊勢ヶ濱親方)がいたことで外国出身力士枠の空きがなく、4年半も研修生として待機状態が続いた。その間に部屋の関取衆との稽古で幕内レベルの実力をつけたわけです」
1億円近い「逸失収入」
実力は関取衆クラスであっても、収入はほとんどない。衣食住は部屋が負担してくれるが、幕下でも相撲協会から2か月に1回支給されるのは養成員場所手当の16万5000 円とわずかな奨励金だけ。研修生は小遣い程度とされるが、新入幕力士の平均年収が2100万円。4年半の研修生期間中に幕内で活躍していれば1億円近い収入があったことになる。
「来場所、十両に昇進すれば月給110万円が支払われる。今年、9月場所までの5場所で旭富士が手にしたのは序ノ口、序二段、三段目、幕下(2場所)の場所手当の60万5000円、格段での優勝賞金(幕下50万円、三段目30万円、序二段20万円、序ノ口10万円)の合計110万円。合わせて170万5000円だった。
来場所、十両に昇進すれば月給110万円と報奨金(十両に昇進すれば基準給が引き上げられて一律40円×4000円)16万円が支払われる。十両を1場所勤めれば本場所がない翌月も給料が支払われるため1場所でこれまでの収入を上回る額を手にすることになる」(協会関係者)
十両は最速2場所での通過も可能だが、幕内に上がれば月給は140万円となり、報奨金は60円に引き上げられる。そして、懸賞金(1本6万円)も手にすることもできるようになる。1年前まで収入0円だった研修生が大きなチャンスを手にしようとしている。角界に受け継がれる格言である「土俵にカネが埋まっている」を体現できるのだろうか。
角界のカネをめぐる仕組みは複雑だ。関連記事『《大相撲「給金番付」を一挙公開!》横綱・大の里よりも持ち給金が多い十両力士とは? 来年からの「給与改定」で横綱は年収420万円アップ、懸賞金激増で“臨時収入”年間約1.5億円も』では、全幕内力士の給金番付を公開。大の里よりも持ち給金の多い十両力士が存在する実態をレポートする。
