相続手続きの締め切りスケジュール
実家の相続は「遺留分」まで考えておく
山梨県に住む女性・Fさん(69才)は、自宅の相続で悩んでいる。
「お盆に子供たちが帰省したとき、家は長男に継がせるつもりだと話したら、息子からは“東京に住んでいるのに、家なんてもらっても困る”、娘からは“私は近所に住んでいるのに、どうしてお兄ちゃんなのよ”と言われてしまいました。どうしてと言われても……普通、家は長男が継ぐのが当たり前ですよね?」
家は長男が継ぐというのは昔ながらの考え方であり、法的根拠はない。民法では子の相続分は平等だ。ベリーベスト法律事務所の弁護士・田渕朋子さんが言う。
「根拠なく“長男が継ぐものだ”と決めると、きょうだい間の不信感や不公平感をあおり、相続争いを招きかねません。欲しい人や住みたい人がいないか、誰も住まないなら売っていいのかなど、それぞれの意見を出し合って決めましょう」(田渕さん・以下同)
また、勝手に長男に相続させるという遺言を残してしまうと、実家の価値が高いほど、ほかのきょうだいから遺留分侵害額請求が起きやすくなる。すると、長男はせっかく相続した家を売却したお金で、きょうだいに対して遺留分侵害額を支払わなければならなくなるケースもあるので、注意が必要だ。
自宅をきょうだいで「共有名義」にするのはリスク
争いになるくらいなら「仲よく共有名義」にすればいい、というのも実は危険な考えだ。
「共有名義だと、売ろうと思っても名義人全員の同意・署名・捺印が必要になり、1人でも反対すると何もできません。これは問題を先送りにしているだけ」
自宅の始末について意見がまとまらないからと、そのまま放置するのはもっと危険だ。
「誰も住まないままの空き家を放置し続け、公衆衛生面や防犯上のリスクが高まると、市区町村から指導や勧告を受けることがあります。すると固定資産税が最大6倍に増えることもある。不動産の放置は次の世代にトラブルを押しつけるだけなので、多少の身銭を切ってでも自分たちの代で片づけることが大切です。価値のある財産は生前に贈与してしまい、価値のない財産だけ残すようにすると、もしマイナスの方が大きくても、相続人は相続放棄さえすれば、引き受ける義務がなくなります」
いざそのときに「知らなかった」「間違えた」では取り返しがつかない。後悔のないよう、正しい知識で備えておこう。
▼▼▼前編▼▼▼
【はじめから読む→】節税のつもりの「たんす預金」や「生前贈与」は逆効果?「相続放棄の誤解」や「2次相続の落とし穴」まで…知らないと損をする相続の知識
※女性セブン2026年10月15日号
