相続の知識をアップデートして賢く備えたい(イメージ)
誰かが亡くなったとき、残された人がしなければならないことはあまりにも多い。死亡届の提出や葬儀だけでなく、その後数か月から数年間にわたって「相続手続き」に追われることになる。ただでさえ負担の大きい相続で、間違えたり、損をしないためには、知識のアップデートが第一だ。「相続の新常識」を紹介する。【失敗しない相続・前後編の前編】
夫が亡くなれば妻が、親が亡くなれば子供が……と、誰かが亡くなったときには財産の大小にかかわらず必ず「相続」が発生し、残された側には煩雑な手続きが強いられる。大相続時代に「絶対に失敗したくない」と準備をしているつもりでも、ちょっとした勘違いや手違いから相続税で大損したり、家族の仲を引き裂く“争族”に発展したりするケースは決して人ごとではない。
「たんす預金」や「生前贈与」は課税対象になりうる
東京都内に暮らす専業主婦のAさん(78才)は昨年、夫に肝臓がんが見つかった。もしものときに備えて、2人の子供たちのための相続税対策に勤しんでいると話す。
「『相続税を減らすには、生前に財産を減らしておくこと』と聞いたので、子供たちと孫にお金を渡すことにしました。もう夫の口座には必要最低限のお金しかありませんが、これで子供たちに迷惑をかけなくてすむと、夫婦で安心しています」
たしかに生前贈与は相続税対策として有効ではあるものの、Aさんのように「とにかく贈与すればいい」と勘違いしている人は少なくない。行政書士で相続・終活コンサルタントの明石久美さんが説明する。
「子への生前贈与は、亡くなる直前の一定期間内(2026年死亡なら最長3年前まで)に行われると“相続の先渡し”と見なされ、相続財産に持ち戻されます。つまり、亡くなる直前に贈与しても、相続税の対象になるのです。
そもそも相続税には基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)があり、財産総額がそれを超えないなら、課税対象になりません。それを知らずにやみくもに贈与して、自分たちの生活が苦しくなっては本末転倒です」
また「銀行に預けていなければ相続税はかからない」と思い込み、たんす預金をするのも“危険な勘違い”。マネージャーナリストで税理士の板倉京さんが警鐘を鳴らす。
「相続税対策の目的でたんす預金を申告から外せば、れっきとした脱税になります。たんす預金をするまでに経由した銀行口座からの引き出しの記録などから税務署に把握されることもあります」
