親子で話し合うべき「相続の取り決め必須事項」
「相続放棄」はマイナスもプラスも失う
茨城県に夫と娘夫婦と住む女性・Bさん(53才)は、こんな悩みを打ち明ける。
「脳梗塞で入院中の父は、40代で事業を起こし、経営者として家族を養ってくれていました。財産だけでなく負債もたくさん残っているようですが、聞きづらくて……娘は“いざとなったら借金だけ相続放棄すればいいよね”と言っていますが、きっとお金も手間もすごくかかるんですよね?」
残念ながら、「借金だけ相続放棄」は不可能。司法書士で行政書士の太田昌宏さんは「相続放棄は誤解が多い」と話す。
「相続放棄は負債だけでなく、預金や不動産といったプラスの財産も含めた一切の相続権を失います。“借金だけ放棄して預金や自宅はもらう”ということはできません。
家庭裁判所に申し立てなければ相続放棄は成立しないので、生前や遺産分割の話し合いでほかの相続人に対して“自分は何も受け取らない”と伝えるだけでは、債権者から返済を求められるケースもあります」
借金は「相続人全員」から取り立てられる
負債を相続することになった際、「長子が責任をもって引き継ぐ」という方法はあまり意味をなさない。ベリーベスト法律事務所の弁護士・田渕朋子さんが言う。
「たとえ“負債は長男にすべて相続させる”と遺言書にあったとしても、債権者は法定相続人全員に対して、法定相続分に応じて返済を請求する権利があります。家族内で誰が責任を負うか決まるだけで、制度的には負債は全員が負担することになるのです」
すなわち、実際に誰がどのくらい負担するかを含め、相続人全員で相談し意見を一致させておく必要がある。
「一部でも払うと相続放棄ができなくなることがあります。さらなる負債が発覚する場合もあるので、相続放棄の余地は残しておきましょう」(田渕さん)
