手書きの遺言書は無効になりやすい
7月に父を亡くした静岡県に住む女性・Cさん(49才)は、最期まで父の介護に貢献した。父はCさんのために遺言書をつくったが、遺言書の通りにはならなかった。
「父は“介護してくれたCに、家と財産の半分を相続させる”と書いて、私に持たせてくれたんです。でも、遺産分割協議のときに兄と妹が“こんな遺言書は無効だ”“無理やり書かせたんじゃないか”などと言い出して……兄が弁護士に相談すると、方式に間違いが多く、法的効力は認められないとのこと。法定相続分通りの3等分で諦めました」
被相続人が手書きでつくる「自筆証書遺言書」にもっとも多い間違いが、要件を満たさない方式でつくり、無効になってしまうことだ。明石さんが言う。
「遺言書に不動産のことを書く際は『建物』か『土地』かをハッキリさせる必要があります。また、『誰に相続させるのか』も不可欠です。ほかにも、正確な日付や押印など、細かく決められた方式を1つでも間違えると無効になってしまう。少しでも迷ったら専門家にチェックしてもらいましょう。場合によっては、公正証書で作成するのがいちばん安心です」
「2次相続」まで考えて相続する
配偶者には相続時の税額軽減制度があり、最大1億6000万円までなら相続税が非課税になる。先日夫を亡くしたばかりの、千葉県に住む女性・Dさん(71才)が話す。
「家や土地などを合わせると、夫の財産は約1億円にもなりました。これを子供たちに相続させると相続税がかかるので、まずは私が全額相続しようと思っています。非課税ということは、申告は必要ないですよね」
Dさんの思い込みには、いくつかの落とし穴がある。
「配偶者控除や相続の特例は、申告して初めて受けられるもの。たとえ非課税になっても、制度を使う以上申告は不可欠です」(板倉さん・以下同)
さらに、配偶者控除を使う場合は、次に自分が亡くなってから子供に財産を渡す「2次相続」での相続税を考慮する必要がある。
「母が亡くなって法定相続人が1人減るだけで、基礎控除枠は一気に600万円分減ります。そこに母自身の財産が加わると、2次相続のときに子供たちが払わなければならない相続税が跳ね上がる恐れがある(図参照)。
「いつ」「誰に」渡すかで、相続税は変わる
2次相続での基礎控除額(子供2人なら4200万円)を超える分の財産を母が受け取り、生きている間にできる限り使い切るようにすれば、相続税をゼロに近づけられます」
肝心なのは、元気なうちに家族みんなで話し合っておくこと。そして、相続にはあまり時間的余裕がないことを意識しておくこと。
「相続放棄は3か月以内、相続税の申告は10か月以内、相続登記は3年以内など、相続の手続きには期限があります。親しい人を亡くしたつらさを抱えながら進めなければならず、時間はあっという間に過ぎる。困ったら早めに専門家への相談を検討して」(田渕さん)
▼▼▼後編▼▼▼
【つづきを読む→】死亡保険金は遺産分割の対象外、「実家をきょうだい仲良く共有名義」に潜む罠…正しい相続知識で賢く備えを
※女性セブン2026年10月15日号
