テスラの新型ロードスターが見せた「空飛ぶ車」の可能性(テスラ公式YouTubeより)
「空飛ぶ車」が実用段階に入る日は近づいているのか──。テスラが低空飛行可能な新型車を公開したことで、中国株式市場でも関連銘柄が急騰するなど活気づいている。低空経済関連銘柄にはどのようなものがあり、その現在地はどうなっているのか。中国経済に精通する中国株アナリスト・田代尚機氏が解説する。
捷衆科技、東方嘉盛などがストップ高に
テスラは10月15日、テキサス州スペースXテスト施設において、EVスポーツカー「Roadster(ロードスター)」の新型車を公開した。2008年から2012年にかけて生産された初代「Roadster」はロータス・エリーゼをベースにした車体やシャーシを用い、テスラがEVとして再設計した車であったが、二代目「Roadster」はもちろん全てテスラ設計によるEVだが、車内後方に設置した球形タンクから複数のノズルを通して高圧ガスを噴射する冷ガス推進システム(外から瞬間的に力を加えるための補助装置)を搭載している。観衆を前にした試験走行ではこのシステムを使い、スケートボード競技で使われる垂直の壁を更に内側に巻き込んだような形状の道路を勢いよく走行、空中に飛び出し、半回転してから安定を保ちゆっくりと着陸してみせたり、前面で停止している高さのあるトラックを含む数台の車両を飛び越えてみせたりするなど、画期的な性能を披露した。
壁を走り(テスラ公式YouTubeより)
飛び立った(テスラ公式YouTubeより)
この試験走行公開を受けて16日の中国本土市場では、テスラにドアフレームシステムなど精密射出成形部品を供給する捷衆科技(920690、北京A株)、テスラの部品輸出入業務サービスを独占的に行う東方嘉盛(002889、深センA株)といった銘柄がストップ高まで買われた。しかし、大半のテスラ関連銘柄の株価は動いていない。
幅広く買われたのは、低空経済関連銘柄である。テスラが新しいシステムで飛行する自動車を開発したことで中国企業が「空飛ぶ車」の開発を加速させるといった見方が株式市場に広がり、多目的ドローンメーカーで、電動で垂直離着陸する航空機(eVTOL)の開発を進める華力創通(300045、深セン創業板)、空調メーカーでeVTOL用のローターに使われるブレードの開発を進める金盾股フェン(300411、深セン創業板)、新エネルギー関連の電動駆動・電源システムメーカーでeVTOL用の動力システムの開発を進める英博er(300681、深セン創業板)、航空機、ドローンなどに使用される複合材料部品メーカーの佳力奇(301586、深セン創業板)など、多数の低空経済関連銘柄がストップ高まで買われた。
二代目「Roadster」の発売について、既に予約販売が始まってはいるものの、実際の供給は2028年を予定している。また、現段階では一般道での走行認可は取得していない。冷ガス推進システムはあくまで自動車を補助的に「飛ばせる」ためのシステムだ。ちなみに、現時点における「空飛ぶ車」開発の中心はeVTOLであるが、イーロン・マスク氏は2017年4月のTED(米国の非営利メディアなどによる有料カンファレンス)において「空飛ぶ車(eVTOLを指すとみられる)にはかなりうるさいといった課題がある」、「発生する風圧は非常に強い」、「安心できる状況にはならない」、「部品が外れて落ちてこないか不安になる」などと酷評している。自社ではeVTOLの開発を行っておらず、関連企業への投資も控えてきたといった経緯がある。


