カフェのバイト先で筆者が出会った「いい上司」とは?
ソリの合わない上司からの度重なるパワハラは、日々の仕事のうえで、多大なるストレスを与える。「なんでこんな人が私の上司なんだ……」と絶望することもあるだろう。では逆に「いい上司」とはどのような人だろうか。「これまで様々な“いい上司・悪い上司”と接してきた」というネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、自身の経験を踏まえて綴る。
難癖をつけて公開処刑のごとく批判してくる“悪い上司”
日々、上司からの厳しい追及や糾弾、叱責に精神的苦痛を感じている方も多いでしょう。自分が仕事をしていることを見せるべく、さらには自身の細かいことに気付く優秀さ(粗探し能力の高さ・いちゃもんの達人)をアピールすべく、難癖をつけて公開処刑のごとくあなたを批判する──。それは衆人環視の状況にあるオフィス内であり、他の人も含んだメールやSlackなどのグループウェアでもやってきます。
これは、上司・部下の関係に加え、発注主と発注相手(特に正社員と下請け・フリーランス)でも発生することですが、本当にストレスを覚える。ただ、ここで言いたいのは「悪い上司・発注相手」は、あなたにとっては単なる害悪でしかない、ということです。正直、パワハラやいじめに近いようなことを仕事人がしてもメリットはない。緻密な仕事っぷり、よく気づく優秀な人、を他者に知らしめるという狙いはあるのかもしれませんが、案外、部下・下請けのやる気を削ぐだけでなく、さらに上の存在の人にも煙たがられることは多いものです。
多くの場合、その状況を見ている人は「そこまで言わないでいいのでは……」とパワハラをされている側にシンパシーを覚えるものです。わざわざ公開処刑をして自身の存在感をアピールするような上司・発注主は、あなたを評価向上のツールとして利用したいだけではないでしょうか。
私自身、多くのフリーランスとの付き合いがありますが、ほとんど怒ることはありません。というのも、他人にあまり期待していないのと、怒ると恨まれるから。「まぁ、別に育てる義理はないので、この人はこれで縁を切ればいいか」としか考えない。だから、いちいち怒ったりパワハラをする上司・発注主の気持ちが理解できないのです。
「忘れるのは仕方ない」「もう一回聞くことを躊躇しないでください」
その一方、「いい上司」は存在します。だからこそ絶望をしてほしくない。私は現在、佐賀県唐津市のカフェ兼バー「ちょこバル」で週に1回バイトをしています。ここではKさんという女性が、私の上司というか先輩として存在します。今年の1月から、私とMさんという女性の2人で、毎週金曜日にこの店で働くことになりました。
初回と2回目のバイトの時は、Kさんから指導を受けました。店を開ける前にやるべきこと、接客の作法、各種飲食物の作り方、レジの打ち方・締め方、迷惑な客がいた場合の対応など……、すべてをこの2回で教えてもらい、以後、毎週金曜日はMさんと私の2人で回しています。この時、Kさんから何回か言われたのがこの言葉です。
「私が以前伝えたことについて、もう一回聞かれても『前に言ったでしょ!』なんてことは言いません。いくらでも聞いてください。中川さんとMさんも、忘れることはあるでしょうが、大人なので忘れたことを恥ずかしがって違うやり方をする、とかはしないはず。忘れるのは仕方がないので、もう一回聞くことを躊躇しないでください」
一気に色々なことを伝授されただけに、私自身も全部は覚えられなかったんですよね。たとえば「梅酒は90ml」「甘酒は150ml」「サラミは5切れ、ただし、隅っこが残ればそれも出してください」に加え、アイスコーヒーとホットコーヒーの豆の量の違いなど色々覚えることが多い。その大変さを分かっているのと、私とMさんに対して信頼感をもって接してくれたわけです。
また、Kさんは、本業がある我々2人が「すいません、○月×日は出られないんですよ……」と恐縮しながら言うと、「私が出るから大丈夫」と言ってくれます。ちなみにKさんは、土日はワンオペで店を切り盛りしています。
「あぁ、こんな素晴らしい“上司”もいるんだ……」と感動し、職場のことをもっと好きになりました。そこでふと、かつて私にも様々な“いい上司”と言える存在がいたことを思い出します。それぞれ共通するのは「自由にやらせてくれる」「叱責しない」という2点です。その上司・発注主が責任をもって私をアサインしてくれたからだと感じます。
