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業界1位のダイソー、受け継がれる「ネガティブゆえの底力」

「ダイソーはいつか潰れる」

 100円ショップ業界でトップを走るダイソーを一代で築き上げた大創産業の矢野博丈会長(74才)もまた、「人間には先を見通す力などない」と断言し、ダイソーには確固たる経営計画が存在しない。それどころか、口癖のように「ダイソーはいつか潰れる」と言い続けてきた。長年にわたって矢野会長を取材し、『百円の男 ダイソー矢野博丈』(さくら舎)を著した作家の大下英治さんが分析する。

「その考えはおそらく、矢野会長の生い立ちから生まれたものでしょう。貧しい家庭に生まれ育った矢野会長は9回の転職を重ねてから移動販売を始めましたが、その後も自宅兼事務所が放火で全焼、従業員に売り上げを持ち逃げされるなど災難続きでした」

 予測不可能なトラブルに何度も遭ってきたがゆえに、矢野会長はダイソーの将来を悲観的に見つめている。

「しかし、先を見通せないとわかっているからこそ、今お客さんが求めていることに全力で応じることができる。月に700点の新商品の開発は、彼のネガティブさの賜物でしょう」(大下さん)

 矢野会長の「ネガティブゆえの底力」は、後任社長に就任したばかりの次男・靖二氏(46才)にも受け継がれている。

「新社長は小さな頃からダイソーを手伝い、父の背中を見てきた、ある意味誰よりも古い社員。これまで父が直面した苦難を共に乗り越えてきたうえ、お客さんにとって何より品質が大事だと肌感覚で知っている。加えて、新社長はコンピュータによる在庫管理など、物流の最先端をあえて一旦他の企業に就職して学んだ。“品質主義”を貫きつつ、近代化の新しい風を吹き込んでくれるでしょう」(大下さん)

 カゴいっぱいに食料品や掃除用具を入れた中年女性、イヤホン1つだけを手にした若い男性、キャラクターのついたノートを何冊もカゴに入れた外国人女性…。私たちの“今”に採算度外視で寄り添う100円ショップのレジは、今日も長蛇の列が絶えない。

※女性セブン2018年3月29日・4月5日号

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