そこには「戦後最大の危機的情勢」との認識の下、「防衛型空母」(多用途母艦)の保有や空母に垂直離着陸ができるF35Bステルス戦闘機の購入、敵基地反撃能力を持つ「巡航ミサイル」配備などを柱に、防衛費を現在のGDP比約1%から英仏などNATO諸国並みの2%に倍増させる目標が盛り込まれた。
提言の骨子案をまとめた自民党安全保障調査会長の中谷元・元防衛相は、空母について「導入したい。転用も含みます」と、ヘリ搭載型護衛艦「いずも」「かが」の空母転用も視野に入れた言い方をしている。
海上自衛隊にとって空母保有は長年の悲願だが、とてつもない費用がかかる。自民党国防族のブレーンでもある軍事アナリストが語る。
「空母1隻を常時運用するには最低3隻必要です。1隻が任務に出ている間、もう1隻は補給のため帰還、さらにもう1隻は整備のためにドック入りする。それに運用前のトレーニング用空母もいる。
本格空母4隻の建造費はざっと2兆円から3兆円。3隻分の艦載機約180機とヘリや哨戒機(同90機)も新たに購入しなければならない。建造費の他に、毎年の空母運用費が3隻分で約1650億円程度はかかる。現在の海自の年間予算(約1兆2000億円)ではとても空母は持てません」
しかし、新防衛大綱で防衛費が現在の5兆1911億円(今年度)から2倍の10兆円以上になれば、空母を建造し、必要な装備や戦闘機を米国から買うことができる。米国に大金が落ち、日本の防衛力は飛躍的に高まる。
安倍首相もトランプ氏もウィン-ウィンなのだ。しかし、そのカネは空から降ってくるわけではない。
※週刊ポスト2018年6月29日号