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安倍政権が目論む「年金68歳支給開始」の標的は団塊ジュニア

団塊世代も逃げ切れない

 すでに年金受給が始まっている団塊やポスト団塊世代も「今回は逃げ切れそうだ」と安心するのは早い。

 財務省は前述の年金改革資料の中で、支給開始年齢引き上げと並んで「年金課税の見直し」を打ち出しているからだ。年金制度の変遷に詳しい「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。

「政府は昨年の税制改正で年金課税を強化し、2020年から施行される。しかし、これは年金以外に高額な収入がある層が対象です。他に収入がない年金生活者の多くは『公的年金等控除』という手厚い税制上の措置があるため、事実上税金非課税になっている。そこで公的年金等控除を縮小して税金を払っていない年金生活世帯に広く課税しようという狙いでしょう」

 年金世帯には致命傷だ。現在120万円の年金控除が将来的に50万円引き下げられれば、標準的な年金世帯は税金と社会保険料を合わせてざっと30万円の負担増になる。国が払った年金を年金生活者から奪い返すという形の、年金大幅カットだ。

 安倍政権の年金改革の行き着く先は、ロシアをみればわかる。ロシアではこの夏、プーチン政権が年金支給開始年齢を「平均寿命」近くまで大きく引き上げた。この“改革”で国民の4割が一度も年金を受給しないまま死亡すると試算され、怒った国民が全国各地で大規模な抗議デモを展開した。

 日本でも、今後68歳から70歳、そしてさらにその上へと年金支給開始年齢がどんどん引き上げられ、いずれ平均寿命の延びに追いつく。保険料を納める期間は延び、年金を受け取る前に死ぬというブラックジョークは確実に現実に近づいている。

※週刊ポスト2018年10月12・19日号

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