田代尚機のチャイナ・リサーチ

「豚年ベビー」願って中国の出生率上昇か すでに家政婦は大忙し

労働年齢人口は7年連続で減少

 日本では、子供が生まれたからと言って、全面的に母子のサポートをするために人を雇うような家庭はほとんどない。中国では、都市部の少しばかり裕福なサラリーマン世帯では家政婦を雇うケースが多い。

 家政婦の仕事に就くには高い学歴が必要なわけではない。一般サービス業の給与は北京でも高くない。たとえば、スーパーに派遣される販売員の月給はせいぜい4000元(約7万円弱)程度に過ぎない。これだけの給料格差があるのだから、募集がもっと増えて、需給が均衡してもよさそうなものだが、仕事を探す側も、いくら高給といえども、他人の子供の面倒を見るのは気苦労も多い。万が一の場合の法的リスクを嫌う傾向もあるようだ。また、生活に必要な給料でよければ、仕事はいくらでもある。中国の生活環境は、統計数字に表れている以上に豊かなのかもしれない。

 一方、もう少し別の見方もある。

 国家統計局によれば、2018年末における中国大陸の総人口は13億9538万人で前年末と比べ530万人増えているが、16歳から59歳の労働年齢人口は8億9729万人で、前年と比べ、逆に470万人減少している。労働年齢人口の減少はこれで7年連続となっている。

 所得、医療水準の上昇に加え、国家の医療保険、社会保険制度が向上してきたことで、平均寿命は延びているが、一方で出生率が低下している。豚年を控え、出産を控えた影響もあるかもしれないが、2018年の出生率は1.094%で、2017年よりも0.149ポイントも低下している。

 国務院は2015年、「規定に符合する夫婦は二人目の子供を持つことを許可する」といった内容の二人目政策を実施し始めたことから、直後の2016年の出生率は1.295%まで上昇したが、その後は減速が続いている。今年はどこまで回復するのか注目されるところである。

 若い夫婦が複数の子供を産まなくなった代わりに、一人の子供に対する思い入れが強くなりすぎていて、両親が育児に過剰な費用をかけるようになっている。それが家政婦の不足となって表れているのかもしれない。

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。