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「年金100年安心」の真意 支給減らせば制度を100年維持できる

「自動減額システム」が発動

 若手議員時代から厚労族議員として鳴らした安倍首相は、「100年安心」の本当の意味を正確に理解している。

 年金制度は現役世代が負担する保険料で、65歳以上の人に年金を支払う「世代間扶養」の仕組みだ。少子高齢化で年金受給者が増え、現役世代の人口や給料(保険料)が減れば年金財源を賄えなくなる。

 そのため、制度が破綻しないように平均寿命の伸びや人口減少、経済状況に応じて年金給付水準を自動的に引き下げるマクロ経済スライドという制度が2004年の小泉政権の年金改革で導入された。いわば年金受給者に対する「自動減額システム」だ。

 マクロ経済スライドは2015年に初めて発動され、物価上昇を加味すると、安倍政権下で年金給付水準は6%下がったという分析がある。

 政府のいう“100年安心”は「支給する年金を減らしていけば制度を100年先まで維持できる」という意味で、決して「年金受給者の生活が100年安心」と保証するものではない。それがわかっているからこそ、安倍首相はマクロ経済スライド(年金自動減額システム)を発動したことに胸を張ってみせたのだ。

 そうした制度維持のため、厚労省が5年ごとに行なうのが年金の「財政検証」だ。100年先までの保険料収入と給付の見通しを試算、制度を点検し、新たな改革を追加することを目的とするが、6月中に公表されるとみられていた検証結果の公表は先送りされた。参院選前にその全容を知られるのは具合が悪いということだろう。

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