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復興税の「不正流用」、中止のフリをして今も執行されている現実

「時間がかかりすぎた。待ちきれずに別の土地に引っ越した人も多いし、被災者住宅などに残った人たちは高齢化して、いまから借金をして家を建てる気にならない」(住民の1人)

 造成した宅地の66%で住宅建設希望者がいない。その造成につぎ込まれた復興予算は1戸あたり5000万円といわれる。その原資は復興税である。

「増税の口実になる」──大地震と大津波、原発事故という未曾有の危機に直面したあの時、当時の菅直人内閣の中枢にそう考えた者がいたことは間違いない。

 復興税の構想が浮上したのは震災発生のわずか2日後だった。菅首相は野党だった自民党の谷垣禎一総裁と会談して復興への協力を要請する。2人とも財務大臣経験者で増税論者として知られていた。党首会談後の会見で谷垣氏はこう述べた。

「復興財源を国債発行だけで賄うことができるのか。復興支援税制のようなことを考える必要があるかもしれない」

 自衛隊や消防、警察が懸命に被災者の救助にあたり、福島第一原発ではメルトダウンが進んでいたさなかに、国民の生命を預かる首相と野党第一党の党首がカネの話し合いをしていたのだ。

 菅首相はほどなく「震災に伴う負担を社会全体が分かち合う」と呼応し、そこから与野党一体で増税シナリオが進んでいく。

 菅首相から「東日本大震災復興構想会議」の議長に任命された五百旗頭眞・防衛大学校校長が「震災復興税を創設する」と提案すると、短期間の議論で政府は復興基本方針に復興税の創設を盛り込む。その年11月には復興増税法案が民主、自民、公明党の賛成多数で成立した。所得税と住民税にそれぞれ「復興特別税」を上乗せする形で、総額10兆5000億円の増税が決められた。

 負担額は年収500万円のサラリーマン世帯(4人家族)で年間約2600円、年収1000万円なら年間約1万5000円だ。

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