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6割以上が教育格差を「容認」の異常事態 諦めるしかないのか?

 だが、かつての日本には教育格差のない社会もあったという。

「明治維新より以前は、武士の子供だけが出世できる身分制社会でした。しかし、明治維新で四民平等になると、旧制高校が各地に整備され、農民でも商人でも教育の機会を得られるようになりました。また、第2次世界大戦で国土が焼け野原になった後も、各都道府県に国立大学が設立され、各地域で平等な教育を受けられるようになるなど、同様の“ガラガラポン”が起きました。

 しかし、70年以上も平和で自由で豊かな資本主義社会が続くうち、富める者はより富み、そうでない者は貧しいままという経済格差が拡大。そして、それが教育格差にもつながっているのでしょう」(橘さん)

『アンダークラス──新たな下層階級の出現』(ちくま新書)の著者で早稲田大学人間科学学術院教授の橋本健二さんも続ける。

「戦後、復興とともに格差が広がり続け、いちばん拡大したのは1960年頃。それから高度経済成長によって格差はどんどん縮小し、『一億総中流社会』といわれる時代が到来しますが、1975年頃に格差が最も小さくなって以降は反転し、また格差は拡大し続けています」

 甘んじて受け入れるほかないのだろうか。

「まずは、国の税金で賄っている国立大学が定員を増やし、学力が平均レベルの子でも入れるようにするべきでしょう。アメリカでは、裕福な家庭の勉強ができる子は私学に行って、そうでない子は学費が基本無料の州立大に行きます。そうしたお金による格差を最低限なくす努力は国ができるはずです。

 また、個人でできることとしては、お金のかかる習い事よりも、まずは食事や睡眠など、基本的な生活習慣を子供に身につけさせることが何よりも重要です。その習慣が身心の健康をつくり、生活サイクルが生まれることで日々の勉強も習慣化できます。塾へ行くお金が捻出できないのなら、親も一緒に勉強してあげるのも有効です」(橋本さん)

 現実に横たわる「教育格差」を嘆いて、諦めるだけでは何も変わらない。「身の丈」に合ったものだけを選択するのではなく、子供の可能性を信じることが大切だ。まず親が意識を変えること。それが第一歩かもしれない。

※女性セブン2019年12月5・12日号

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