田代尚機のチャイナ・リサーチ

新型コロナ流行でも中国本土株式市場が堅調な理由

 中国本土A株市場の売買代金をみると、19日から24日にかけて、連続で1兆元を超えている。これは2019年2月から3月にかけての大相場時に匹敵する売買代金である。

 また、大型株を代表する指数である上海50指数は、2月3日から24日にかけて、7.4%上昇に留まっているが、中小型成長株を代表する指数である創業板指数は26.1%上昇している。後者については、春節直前の1月23日と比べても17.4%上昇している。手元資金が豊富になった投資家はリスクテイクを強めており、ハイリスクハイリターンの中小型成長株への投資を強めている。

 では、この株価上昇はいつまで続くのだろうか。中国共産党は、今回の新型ウイルス肺炎の流行について、中国社会に及ぼす影響は大きく、最優先で、緊急に対応しなければならない案件だと位置付けている。だからこそ、短期的に景気を大きく悪化させるであろう武漢市での都市封鎖、全国規模での移動制限などを実施している。

 一方、景気の悪化に対しては主に金融緩和で対応しているようだ。インターバンク市場では潤沢な資金を供給し、実質的な貸出金利を引き下げる。特に資金力が乏しく、経営基盤が脆弱な中小企業に対しては、貸し剥がしを厳しく禁止し、手厚く支援するよう指導する。経営規模の大きな企業に対しては、主に銀行が引受先となる形での社債発行の緩和を通じてデフォルトを発生させないようにし、金融を安定させる。

 株式市場に関する金融当局の政策目標は、市場を安定させることである。金融当局は共産党から結果責任を求められる以上、下値不安は小さいと多くの投資家は考えている。

 ただ、市場を安定させることが目標である以上、金融当局は急騰、つまり、株価のバブル化に対しても敏感である。

 2015年前半、中国はバブル相場を経験したが、きっかけは2014年11月の利下げであった。当時の金融当局はバブルに対する処置が遅れたばかりか、急騰後に行ったバブル潰が効きすぎたために株価は暴落、その対応にあたふたしたことで、国際的に大きな批判を受けることになった。その教訓が活かして、今回は、株価の急落だけでなく、急騰にも細心の注意を払うはずだ。

 深セン総合指数はすでに昨年来高値を更新しているが、上海総合指数はまだである。昨年来高値は2019年4月8日の場中で記録した3283.45ポイントで、24日の終値は3013.05ポイントなので、まだ、8.3%の余裕があるが、そこを短期間で超えるようなら、今度は下振れリスクを注意したほうが良さそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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