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コロナ感染拡大が「年金支給額引き下げ」につながる重大懸念

 安倍首相も年金減額の可能性に言及している。かつてチャイナ・ショック(2015年の上海市場の大暴落)をきっかけにした世界同時株安でGPIFは3か月間に約8兆円もの運用損失を出した。

 当時、国会でGPIFが予定の運用益を出せなかった場合の対応を問われた首相はこう答えた。

「年金積立金を運用しているわけで、想定の利益が出ないということになれば当然、年金の支払いに影響してくる」

 年金減額はシナリオの一つとして想定されていることがわかる。株価が急落してもすぐに年金支給額が減らされるわけではないが、心配なのは今回の新型コロナ危機がこれまでの経済危機と全く違うことだ。

「バブルが弾けたり、金融システムの破綻であれば、それが解消されれば経済は回復に向かう。ところが、新型コロナの被害が長引くと、人とモノの動きが止まってしまう。一部の企業はテレワークでしのげても、工場は社員が出社しなければ生産ラインが動かない。そうした負のスパイラルが続くことで、株価はどんどん下がり、GPIFの年金資産が失われていく」(相沢氏)

待ち受ける復興増税

 国民生活が脅かされるのは年金減額だけではない。国内では宿泊客が激減したホテルの「コロナ倒産」が始まり、観光、運輸、小売業界など売り上げが大幅に落ち込んで経営難に直面している企業が増えている。

 五輪を招致した安倍首相にすれば、面子にかけても東京五輪の中止はさけたい。いまホテルや観光業者にバタバタ倒産されては困る。そこで大型の“コロナ復興予算”を編成して全国に補助金をバラ撒き、「日本は健在」を世界に示そうとするはずだ。

 その後にやってくるのが、財源をまかなうための国民への「復興増税」である。

 国民は政府の対応の失敗で感染の危機にさらされているうえ、これから年金減額、“コロナ復興増税”という三重の苦しみが待ち受けている。

※週刊ポスト2020年3月13日号

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