今年2月、神奈川県逗子市で民有地の土砂が崩れ、女子高生が亡くなる痛ましい事故が起きた。この件の責任や賠償はどうなるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
市道に面する民有地の傾斜の土砂が崩れ、通行中の女子高生が死亡する事故が起きました。崩落の危険性を放置していた責任は重く、彼女への賠償は民有地を所有していた人がするのか、市や県、国が行なうのでしょうか。竹下先生の見解を聞かせてください。
【回答】
ニュースで知るしかない、この事件について言及はできません。あくまでも一般論となります。
崖部分が市道の敷地になっていて、道路の一部として市が管理していれば、公の営造物として市の責任です。単なる私有地であれば、手つかずの自然物でない以上、土地の工作物として、その使用者や所有者の責任が問題になります。どちらにせよ、崖の管理に「瑕疵(かし)」があったかがポイントです。
瑕疵とは、通常有すべき安全性を欠くことです。崖崩壊の原因が予想不可能で、通常備えるべき強度の擁壁でも防ぐことができなければ、責任はありません。仮に脆弱な地盤で普段から落石があり、急傾斜地であった場合には、瑕疵の有無が問題になります。
瑕疵は構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮し、具体的個別的に判断すべきであり、一概にいうことはできません。崖崩落の原因を調べた上で、これらに対する安全性の欠如があったかが争点になります。