田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国「独身の日」に次ぐ大規模ECセール「618」の盛り上がり

「618キャンペーン」で中国のEC流通量は大きな伸び(江蘇省、6月18日。Getty Images)

 アフターコロナの世界では、人々は以前のように気軽に外出し、ショッピングしたりしなくなると予想される。消費構造が大きく変化しそうだが、それに伴って衰退する産業もあれば、成長する産業もある。

 感染を避けるためには密閉、密集、密接といった“三密”を避けなければならないが、小売りの現場でこれを実現するのにEC取引は理想的である。アフターコロナで成長する産業の代表としてEC業界が挙げられる。

 世界最大のEC取引規模を誇るのは中国である。アリババが始めて各社が追従し、今や国民的な大イベントとなっている「独身の日」(11月11日)キャンペーンセールでは2019年、わずか1日、アリババグループだけで2684億元(4兆260億円、1元=15円で計算、以下同様)の流通総額があった。ちなみにこの金額は、日本の楽天市場の年間国内流通総額(3兆8595億円、2019年12月期)を1日で超えている。

 中国のEC業界が行うキャンペーンセールには、「独身の日」のほか、業界ナンバー2の京東集団(JDドットコム)が始めた「618キャンペーン」がある。京東集団が設立日である6月18日(1998年設立)に行ってきたイベントだが、既に淘宝、天猫、蘇寧などの大手が追従、独身の日と同様、EC業界全体のセールに成長しつつあったが、今年は低価格品に強みを持つピン多多(PDD)なども加わった。アフターコロナを意識して、EC業者が全力でセールに取り組んだことで、今年の618キャンペーンは例年にない盛り上がりとなった。

 キャンペーンセールである以上、値引きが最大の魅力である。といっても、単純に価格を引き下げるのでは、どうしても在庫処分の印象が強い。そこで各社は値引きクーポン券を発行、配布することで、幅広い商品が割安に手に入るといった印象を消費者に与える戦略を採っている。天猫ではセール期間中、140億元(2100億円)の値引きクーポン券を発行するなど、各社が100億元(1500億円)規模のクーポン券を発行した。

 さらに、金融機関との提携関係を強化して、分割払いの回数を多くしたり、その間の金利をゼロにするなどしている。

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