大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

7人に1人が辞職希望 官僚を幸福にしない自民党政権というシステム

ゼロベースでやれるかどうか

 そもそも私が著書『新・仕事力』(小学館新書)でも書いたように、許認可など役所の「法律に基づいて制度を運用する仕事」はクリエイティブな要素がないのだから、この領域はAI(人工知能)とビッグデータを組み合わせて自動化し、行政が率先垂範で働き方改革を推進しなければならない。

 一方、国家運営の問題点を解決するための基礎的な変革の方向性(新しい政策)を考えるクリエイティブな領域は、前者と別組織にして無駄な政治家対応をなくし、本来の仕事に専念できる仕組みにすべきである。そうすれば若手官僚もやる気が出て、早めに転職しようとは思わなくなるはずだ。

 その意味で私が注目していたのが、5月に法律が成立した「スーパーシティ」構想だった。これはAIやビッグデータなどの最先端技術を活用して遠隔教育、遠隔医療、電子通貨システムなどの先進的サービスを導入した「まるごと未来都市」をつくるというものだ。この構想が実現すれば、官僚にとってクリエイティブな仕事のモデルケースになると思ったのである。

 もともと私は、政府の「国家戦略特区」を批判してきた。国が許認可権を持っている規制について「特区の中だけ目こぼしをしてやる」という発想だからである。社会の在り方を根本的に変える大改革は、地域限定のチマチマした規制緩和ではなく、国全体に網をかぶせて更地からゼロベースでやらねばならないのだ。

 たとえば、私はマレーシアのマハティール首相の国家アドバイザーとして、18年かけてそれを実現した。既存の役所別縦割り法律の上位概念となる全く新しい「サイバー法」を立案し、同法に基づいてマハティール首相が「マルチメディア・スーパーコリドー」を建設したのである。

 世界から評価されている台湾の新型コロナウイルス対策もそうだ。立役者のオードリー・タン(唐鳳)デジタル担当大臣は他の大臣よりも上位の“スーパー大臣”で、各省庁から集めた役人チームと市民チームを組み合わせた1000人規模のタスクフォースを率い、ゼロベースで効果的な対策を次々と打ち出してきた。

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